国立大学法人の運営費交付金の競争的経費化に反対する決議
 2007年7月6日 
     東京外国語大学教職員組合 第44回総会

 わたしたち東京外国語大学教職員組合は、総会の意志として、国立大学法人の運営費交付金の競争的経費化に反対する。理由は、以下のとおりである。

 2004年4月に国立大学が法人化されてからすでに3年が経過した。運営費交付金の逓減や2006年度から開始された人件費5%削減計画等による財政面の不安定化は当初から予想された通りである。しかし、今年に入ってさらに、運営費交付金までを競争的に配分する方針が打ち出された。
 5月に文科省や財務省の試算が公にされ、ほとんどの地方大学や教育系・文系単科大学への運営費交付金が大幅に削減されることが明らかになったため、法人化のとき以上に国立大学関係者を震撼させた。
 国大協総会では多くの学長がその方針に反対態度を表明している。本学学長も全学メールをつうじて、こうした態度表明を行っている。
 国費を投入している割にはその成果が出ない国立大学が多すぎる、という認識に基づく発想からは、「再編・集約化」(2007年4月17日経済財政諮問会議尾身大臣提出資料)の方向しか出てこないであろう。科研費他の競争的資金に依存せざるを得なくなっている大学では、教育と研究という基本的機能が、すでに歪められている。
 国立大学はときの政府のためのみに存在するのではない、ということをここで確認し、その存立の意義を自ら明確に示す必要がある。
 運営費交付金の競争的経費化は、とりわけ本学のような単科の文科系小規模大学に甚大な影響を与えることは間違いない。すでに、2006年に、専修専門科目にかかわる非常勤講師の削減が敢行されたが、これは中長期的な人事政策の見通しも立てないままにおこなわれた。
 非常勤講師の過度の削減により、各講義科目の履修登録者数が増大した。その結果、これまでのように積極的に参加している学生の比率が相対的に下がり、教室全体の緊張感が緩んでいる。比較的少人数での講義が多かった本学の利点は失われマンモス大学でみられる悪しき現象(出席はほとんどせずに優を取る)が広がることが懸念されることになった。
 このような教育現場の合理化・首切り・リストラは、教育・研究に携わる教員にたいしても、多大な悪影響をもたらし、特定の教員が、全体の大学の行政・教育に対する十分な意見交換・合意形成の努力をなさないままに独走し、その結果、関連する分野の特定の教員が過剰な負担を強いられる事態が起こっている。

 職員にかんしては、現在なお、非正規化が進んでいる。はたして、理のある中長期的な人事政策がおこなわれているのだろうか。本学の屋台骨である教育・研究は、職員の安心できる安定した労働条件があってはじめて可能となる。この点にかんし、職員(非常勤職員、派遣社員もふくめて)に不必要な不安が醸成されることは、中長期的にみて、本学の教育・研究組織を瓦解させることにもなりかねない。

 このような事情を鑑みるなら、単科の小規模文科系大学である本学にとって、現政府が断行しようとしている、運営費交付金の競争的経費化の導入は、教育・研究という労働の条件のさらなる悪化をもたらすだけではなく、そのことをつうじて、(働きつつ学ぶ)学生たちにも深甚な悪影響を与えることは間違いない。

 よって、わたしたち東京外国語大学教職員組合は、総会の意志として、国立大学法人の運営費交付金の競争的経費化に反対することをここに決議する。

              以 上。