結城文部科学事務次官の山形大学長選挙への出馬について

he-forum 各位        7/9/07

     山形大学理学部 品川敦紀

先般来皆様にご紹介している通り,この8月いっぱいで任期の切れる山
形大学長の選考手続きが進められつつ有る。

そして、その中には、結城章夫前文部科学事務次官の名が挙がってお
り,同氏の山形大学学長選への出馬記者会見の内容が,朝日や読売等全
国紙にも報道された。

そこで、再度、今回の学長選考が、徹頭徹尾、現学長、天下り理事ら山
形大学執行部主導で、あらゆる手段を使って、結城前次官を学長に据え
ようとしている、その異常ぶりを、かいつまんでご紹介したい。

<異常ぶりその1ー異常におくらせた日程ー>

そもそも、今回の学長選考の日程は極めて異常であった.前回の学長選
考手続きは,3月末に第1回選考会議が開かれ,そこから手続きが開始
され、5月末に、学内意向聴取と学長候補決定の手続きが行われ、候補
決定から就任まで3ヶ月の時間的猶予があった。

候補決定から,文部科学大臣による任命、理事や経営協議会委員の任命
等の手続きを考えれば,3ヶ月でも十分とは言いがたい。

しかるに、今回は,第一回の学長選考会議を、前回に比べて約1ヶ月お
くらせ、4月末に開催して手続きを始め,学内意向聴取と候補決定は、
なんと7月末に行う日程を決めた。学長候補決定から就任まで、わずか
1ヶ月しかない。これで、どうやって新たに選任された学長が理事や各
種委員を任命できるだろうか?

なぜ、こんな異常な日程を組んだか?それは、国会会期中は、現職高級
官僚は、辞職しないという約束、慣例があったためである、とみられて
いる。

仮に,前回の日程のままであれば,学長候補を決定する5月末時点で、
結城氏が文科省事務次官を退職する事はできず,そもそも学長候補適任
者にする事すら不可能であった。それを可能にするため,わざわざ、こ
こまで選考手続きをおくらせた、と見られている。

<異常ぶりその2ー現職学長の執拗な介入ー>

今回,現学長、現天下り理事ら、現山形大学執行部は,文科省事務次官
の学長就任となれば、当然天下り批判が出る事を予想し,大学構成員の
意向によるとの見せかけを作るため,学部長、評議員や、本学執行部に
近い有力教員を集めて、各学部から結城氏の推薦を行わせたのである。
このことは、学部長らの証言で明らかになっている。

そして、各学部において候補適任者の推薦をおこなう場合,山形大学の
選考規則では,被推薦者の同意を得る事になっているにもかかわらず,
学長の意を受けて推薦した学部長らは,結城氏に推薦への同意を確認し
ていなかったのである。本来なら,これだけでも推薦を無効されても仕
方ない杜撰なやり方である。

結城氏は,形の上では,4学部から推薦されているが,いずれの学部
も、一般教員からの自発的な推薦ではなく,学長ら現代学執行部の意を
受けて学部長みずから、あるいは、副学部長が、推薦したもので、たま
たま、学部推薦枠内の推薦しかなかったため、学部推薦として出て来た
だけである。

結城氏の推薦については,人文学部や理学部では,現職文部官僚の学長
就任には,大学の自治の侵害,所轄官庁と特殊法人の癒着等の問題が有
るとして、推薦取り下げの意見や批判も出ている。

<異常ぶりその3ー資格審査における結城氏欠格のお目こぼしー>

山形大学の学長選考規則では,第一次選考として、各学部等から推薦の
有った学長候補適任者について、資格審査を行う事になっているが,そ
の際,国立大学法人法における欠格条項(現職政府職員は役員になる事
ができない)に該当する場合は,候補適任者から除外しなければならな
い事になっている。

結城前次官について、現職政府職員なのであるから、すくなくとも、学
長候補適任者となるにあたっては,自ら、次官の職を辞する旨文書など
で示さなければならないはずであった。しかし、第一次選考の際,本人
から、欠格条項にかんする何らの弁明も、文部科学次官辞職の意思表示
もなかった。

しかるに、学長選考会議は,その事を不問にしたまま、候補手適任者と
認定し,選考手続きを進めている。

<異常ぶりその3ー学内意向聴取における得票数非公開決定ー>

こうして、学長選考会議は、結城氏を学長候補適任者に認定しつつ,万
一(学内意向聴取における得票の伸び悩み)の場合に備え,2位だろう
が3位だろうが、結城氏に決定できるようにするため,学内意向聴取
(学長選挙)における各候補の得票数を非公開とする決定を行った。

その決定に対し,結城氏を単独推薦した医学部を除く全学部から、票数
の公開を求める教授会意見書がほぼ全員一致で採択され提出された中開
かれた、第二回の学長選考会議において,公開支持5、公開反対が反対
派の議長をふくめ5と言う状況で、本来、議長を除けば,5対4で公開
の決定が行われるはずだった採決を、議長が最初の採決から加わり、む
りやり5対5の可否同数にして、その上で,可否同数での「議長職権」
と称して非公開決定を行った。議長が2票を行使してまで非公開の決定
に固執したのである。

この決定により,事実上、学長選挙は終わったも同然になった。学長選
考会議は、結城氏の上位3位以内の得票獲得だけを心配すればよく,得
票が1割に満たなくとも、他に過半数を獲得した候補がいたとしても,
3位までに入りさえすれば、結城氏に決定する事が可能となった。

<異常ぶりその4ー学長候補適任者による公開討論会日程の変更ー>

今回,学長選考会議は,6月11日に開かれた会合で、公開討論会を1
回開催する事を決定した.山形大学は、4キャンパスに別れたたこ足大
学のため本部のある山形市小白川地区で1回開催し、他キャンパスに
は,テレビ会議システムで配信するとしていた。

ところが、開催間際になって、急遽、4キャンパスで4候補そろい踏み
で開催するという変更が一方的に行われた。山形大学では,学内的に批
判の多い結城氏の売り込みのため,それぞれの候補の都合等おかまいな
しに,急遽計画されたのではないか、と批判がおこっている。

その4回の討論会の開催日程も、結城氏にあわせたとしか言いようがな
いかのように、くるくると日程変更がなされているようである.

<こんな異常ーすべてが結城前文部科学事務次官の学長就任のためにー>

上記のように,今回の山形大学における学長選考手続きは,無理に無理
を重ねた常軌を逸したやり方がなされている。

これは、すべて現学長,現天下り理事らと学外委員らが仕組んだ結城前
文部科学事務次官を山形大学長に据えんがための策略と見られている。
実際そう見られても仕方がないやりかたでろう。

もし、現学長らが本当に次期山形大学長に最もふさわしい人物だと思う
なら,正々堂々と正規の手続きを踏んで学内の支持を獲得すればいい事
である。

それを、学内世論を無視して、一方的に学長に決定するなら,それこ
そ、文科省と結託した勢力による天下りの押しつけとの批判を受ける事
になろう。

<こうしたやり方の容認=結城氏の見識を疑うー>

こうした異常なやり方に対して結城氏はどう考えているのだろうか?

得票数も非公開にされて,自分がどれほどの学内の支持を得ているのか
も知らないまま,選考会議で決定されれば,学長に就任するのであろう
か?

仮に,得票が公開されて多数の支持が得られてなくても学長の席にすわ
るのであろうか?

規則や手続きにうるさいはずの官僚として,学長候補に決定されれば,
今回の選考手続きの数々の瑕疵には目をつぶって平気でひきうけるので
あろうか?

もし、それらに構わずして学長に就任するというのであれば,その見識
がいかほどのものか明らかであろう。