『朝日新聞』2007年6月28日付

補助金申請しない教員に「罰則」 財政難の宇都宮大学


文部科学省に科学研究費補助金(科研費)を申請しない教員は、大学が教員に配分する研究費を1割減らします――。財政難に悩む宇都宮大学は今年度、外部資金の獲得をねらって、こんな「お触れ」を全教員約350人に出し、実行に移している。同大は「大学として生き残っていくため、教員に対する引き締めが必要」と必死だ。国立大学協会によると、科研費申請をめぐるペナルティーは珍しいという。

04年の法人化以降、教育研究の基盤となる運営費交付金が年率1%で削減され続けており、同大では年間の削減額は5000万円に上るという。目減りした分の穴埋めが緊急課題となっている。

科研費は、文科省が公募の中から研究内容などを審査して配分するもので、各大学が奪い合うことから「競争的資金」と呼ばれている。科研費を担当する同大研究国際課は「教授も営業活動が必要な時代。自分の研究費は自分で稼いでもらいたい」と力を込める。

同大は06年度に原則、全教員が科研費を申請することとし、今年度からは申請しない教員に「ペナルティー」として教員の命綱である研究費の削減に踏み切った。さらに、2年連続で申請しない教員は研究費を3割削減することも決めた。

その結果、同大の申請率は06年度の73%から、昨秋公募された今年度分では90%に急伸。今年度は過去最多の116件が採択され、総額2億8400万円が交付される。ただ、大学別の配分額では、東京大学の196億3500万円を筆頭に同大は98位にとどまっている。同課は、次は採択率の向上に知恵を絞るという。

一方、教員には大学側の「脅し」ともとれる方針に対する不満がくすぶる。ある文系教授は「教員に対する信頼が感じられず、教員いじめのようだ」。大学側は「地道で基礎的な研究が大切なことは分かる。でも、競争的資金に力を入れる文科省の姿勢に追随するしかない」と漏らす。