『熊本日日新聞』射程 2007年6月6日付

競争優先の危うい大学改革論


政府の経済財政諮問会議の民間議員が、大学・大学院改革をめぐり、国立大を五グループ程度に分け入試を分散実施、受験生が複数大学に合格可能にするよう提案した。学生の選択による大学間競争を促すのが狙いという。受験生にとっては機会が増え一見良さそうだ。

しかし、改革の狙いはどうも別にある。民間議員は国立大の補助金である運営費交付金を第三者による教育評価に応じて傾斜配分する改革案を示している。合格後に実際に入学する学生の歩留まりや定員割れのような状況も算定の評価に加味するわけだ。国立大間で生き残りをかけた競争が始まる。

財務省も同じ考えで先ごろ、研究実績に応じて配分する試算をまとめた。それによると、現在より配分が増えるのは東大など十三大学で、85%の七十四大学は減額となった。五十の大学で、交付額は二〇〇七年度と比べて五割以上も減ることになる。

同交付金は教員数などに応じて配分、人件費や日常の教育・研究費などに使われる。配分が画一的だとの批判もあり補助金を有効に使おうというのは分かる。だが提案が通れば成果の見えやすい研究だけが優先され、なかなか結果が出ない基礎研究や産業界と関係の薄い分野は冷遇されるだろう。

学問の自由は揺らぐ。それどころか大学の再編が加速する。「全都道府県に国立大学が必ず一つ必要なのか」。これが民間議員の本音だ。知の分野でも都市と地方の格差を広げようという教育再生とはいったい何なのだろう。(早川)