『福島民報』論説 2007年6月6日付

福島大への交付金減らすな


地方にある中小規模の国立大学は切り捨てられるのだろうか。財務省が競争原理を加味してまとめた国立大学への運営費交付金の試算によると、87校のうち85%に当たる74校で減額となる。県内で唯一の国立大学である福島大は81・5%も減り、減少率は11番目に大きい。

福島大の今年度収入は約56億円が見込まれ、このうち国立大学への補助金で人件費や研究費などに充てる運営費交付金がほば3分の2に当たる約37億7800万円。試算だと約7億円に減額されてしまい、入学金や授業料を大幅に値上げしなければ、埋め合わせることはできない。これまで入学金、授業料を抑えてきた国立大学の使命を考えると、運営費交付金に競争原理のみを導入すれば、大学運営が成り立たなくなる。

試算通りの配分になるとは到底考えられないが、座視もしていられない。福島大をはじめ減額試算となった大学は連携して財務省への働き掛けを強化すべきだろう。

歳出削減を目指す財務省の試算は、賛同できない配分方法に基づくものだ。確かに運営費交付金については教職員数など規模によって大枠が決まる、現行の画一的な配分ルールには批判がある。しかし、研究成果のみを重視すべきではない。

今回の試算で増額となったのは、北海道、東北、東京、名古屋、京都、大阪、九州の旧7帝大と東京工業、一橋、東京農工、神戸、それに科学技術の最先端を専門に研究する長岡技術科学、奈良先端科学技術大学院の合わせて13校にすぎない。歴史のある理工系学部、研究所を持つ大学が優遇される形だ。増額となる大学名を見ると、先駆的な研究に予算を配分した文部科学省の「21世紀COEプログラム」(トップ30大学構想)で選定された大学とほぼ符合する。このプログラムは、日本の大学を世界最高水準の研究拠点に育てるための制度だが、地方の大学からは「地方大学の切り捨てではないか」との疑問が出ていた。財務省試算について文部科学省は「大学運営が脅かされてしまう」と危機感を表明しているが、研究成果を優先し特定大学のみを重視する点では財務省と体質的には変わらないといえる。

福島大よりも減少率が大きい10校のうち9校は宮城教育、上越教育など教員養成系。教員養成の単科大学に画期的な研究成果を求めるのはどだい無理な話だ。また、具体的な成果を生み出しにくい基礎的な分野や人文学部系の研究も、財務省試算の配分方法にはなじまないだろう。

福島大は理工系の歴史が浅く極めて不利な状況にある。大学は研究だけでなく教育、社会貢献といった多面的な役割を持つ。福島師範や福島高商の流れをくむ福島大は優れた人材を数多く輩出、福島県の発展にも大きく寄与してきたことが評価されるべきだ。

もちろん、大学は「治外法権」ではなく大学運営を漫然と進めることは許されない。無駄を省く経営努力もしなければならない。

ただ、歳出削減を「錦の御旗」に地方の中小規模大学を切り捨てる財務省の方針を容認するわけにはいかない。福島大だけの問題ではない。県、県議会なども巻き込んだ運動の展開も必要だろう。(佐藤 晴雄)