『朝日新聞』2007年6月8日付

大学交付金「傾斜」の裏


決まった額のお金を分け合うとき、より多くもらう人が出てくれば、少なくなる人がいる。小学生でもわかる話だが、教育再生会議にかかるとそうでないらしい。

1日に出された再生会議の2次報告で、国立大学の運営費交付金の書きぶりは焦点の一つだった。主に人件費や光熱水費にあてられる資金だが、経済財政諮問会議の民間議員が「競争原理の導入」を打ち出し、文部科学省が「それでは地方や単科の大学は次々につぶれる」と反論していたためだ。

報告は「基盤的経費は確実に措置」としながら、運営費交付金は「評価に基づき大幅な傾斜配分を実現」と記した。しかし、「額が減る大学はあるのか」と聞くと、山谷えり子首相補佐官は、「それは競争的研究費のこと」と言い、文科省出身の事務局は「運営費交付金の中の競争的部分」と補足した。では、なぜそう書いていないのか。結局減る大学があるのか、いくら聞いても答えはなかった。

減ることを名言した時の影響をおそれたのかもしれない。だが、負の部分を隠したままの提言は、何の説得力もない。(中井大助)