『北海道新聞』2007年6月7日付

財政審 教育予算拡充けん制 来年度予算 財務相に建議提出


財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は六日、二○○八年度予算編成に向けた建議(意見書)を尾身幸次財務相に提出した。安倍晋三首相が掲げる「教育再生」をめぐり教育予算への歳出拡大圧力が強まっているが、「借金が増えるだけ」と教育予算の増額を強くけん制した。地方自治体間の財政力格差の是正では「自治体間の調整」を優先し、地方税の枠組みの中で新たな仕組みを検討すべきだとの考えを強調した。

教育予算については「増額のみが追求されれば、子どもにとって背負わされる借金が増えるだけの結果となりかねない」と、政府・与党内で高まる教育予算拡充論にくぎを刺した。

その上で、過疎地の小中学校の統合などの具体策を提案。通学が遠距離化するなどの問題が予想されることから「地域に応じた制度設計」の必要性を指摘しながらも、「インセンティブ(奨励策)の付与」などにより統合を進めるよう提言。「財源を教育再生に資する予算にシフトさせる」との方針を示した。

国立大学に関しては、運営費交付金を大学の実績に応じて配分する仕組みに見直すほか、授業料の一律横並びを改め、学部や大学ごとで差をつけるよう提言した。

地方自治体間の財政力格差の問題では、国税を直接巻き込む形ではなく、まずは自治体間の調整に委ねるべきだと強調。都市部に偏る地方法人二税(法人住民税、法人事業税)について「配分基準の見直しや、自治体間の水平的な財政調整制度の導入」を検討するよう求めた。

また、財政運営に関して「財政健全化に向けた取り組みを緩めるようなことがあってはならない」とし、景気回復による税収増で財政再建のたがが緩むことに警戒感を示した。

七月の参院選を前に、消費税についての記述は見送られた。