http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/tosin/zaiseia190606/zaiseia190606_00.pdf

平成20年度予算編成の基本的考え方について
平成19年6月6日
財政制度等審議会

ウ.高等教育予算
1 国立大学予算を巡る課題〔資料U―21参照〕
高等教育予算については、「基本方針2006」に定められた方
針を堅持しつつ、大学教育改革や国際競争力の強化など各高等
教育機関の教育・研究の質を高めるための取組みを充実させる
必要がある。

大学教育の再生が議論されている中、国立大学法人について
は、現在、在学生一人当たり約180万円の国費が投入されてい
る現状を踏まえ、国立大学法人が高等教育において果たすべき
役割は何か、再検証が必要である。

また、全国87ある国立大学法人については、各機能・分野ごと
に再編・集約化を行い、国際的に競争力あるナショナルセンター
を目指し、国からの助成も集中と選択をより徹底する必要があるの
ではないか。その際、各機能・分野ごと、各大学の特色を見極め
つつ、教育・研究資源をどのような形で集約化していくのか、早急
に「青写真」を描くことも検討すべきである。加えて、各国立大学
法人が「研究」や「教育」にかけているコストを、人件費を含めて検
証を行いつつ、各機能・分野ごとに教育・研究資源をどのような形
で配分するのかも検討する必要がある。

国立大学法人運営費交付金の配分ルールについても、2010
年度以降の第2期中期計画を念頭に、国立大学法人の教育、研
究等の機能分化、再編・集約化に資するよう、大学の成果や実績、
競争原理に基づく配分へと大胆に見直す必要がある。いずれにし
ても、現行の配分ルールのままでは、国立大学法人間でのダイナ
ミックな資源配分のシフトを行い、世界で通用する大学を実現して
いくことには大きな制約がある。また、この配分ルールの見直しとも
連動させつつ、国立大学の授業料(535,800円)は提供される
教育・研究内容の質に応じて設定されるべきであり、全大学・学部
で一律横並びの授業料は見直しが必要である。

2 奨学金事業の見直し
奨学金事業については、これまで当審議会が指摘した通り、金
利リスク・回収リスクへの対応が急務である。

特に、有利子事業につき、3%の金利上限を付している点、就
学中の金利分を事後的にも一切賦課しない点は、今後金利が上
昇していけば大きな歳出増につながり、奨学金制度の持続可能性
を損なうことにもなりかねないことから、早急な見直しが必要である。
また、回収力強化については、民間委託を推進するとともに、貸
し倒れによる損失を安易に国民全体に転嫁することなく、まずは機
関保証の拡充を図っていく必要がある。ただし、その際は、機関保
証が単なる債務の付け替えとならないよう、厳格な回収努力と適
正な保証料率の設定が求められる。

3 私学助成の配分方法の見直し
私学助成については、2007年度から、各学校の経営戦略の
特色に応じた支援を行う仕組みへの転換(特別補助(平成19年
度予算額1,113億円)の改組)が図られており、また、定員割れ
の解消等経営改善に取り組む私学を支援するインセンティブが導
入されたところである。

今後は、より効果的に私学の経営健全化を促すべく、私学助成
の過半を占める一般補助(平成19年度予算額2,168億円)の
配分に当たり、単に定員割れか否かというだけでなく、より一般的
な私学の経営・財務状況を表わす指標を用いるなど、私学の経
営状況が助成額により直接に反映されるような改革を進める必要
があると考える。

エ.今後の教育予算のあり方について
教育再生の観点から、教育予算の増額を求める声が大きい。確
かに、資源に乏しい我が国にあって、人材は貴重なリソースであり、
人格形成の上でも、能力向上の上でも、教育の重要性は誰もが認め
るところである。しかし、効率化への取組みや無駄を省く努力を行うこ
となく、教育予算の増額のみが追求されれば、結局子どもたちにとっ
ては、背負わされる借金が増えるだけの結果となりかねない。効率化
を徹底し、教育の質の向上に直接資する予算とは何かを見極め、そ
こに予算をシフトしていくことが必要となる。

「基本方針2006」において示された教育予算の枠組みは、こうし
た方向に沿うものである。すなわち、機械的・一律的に配分される傾
向が強い人件費、機関助成については縮減を行うとともに、その配
分方法を成果や努力をより反映したものとする一方、教育の質をより
高め、教育再生に資する様々な取組みに予算をシフトするものである。

平成19年度予算においては、こうした枠組みの下、機関助成を
縮減しつつ、教育政策経費9については4.2%の伸びとされるなど、メ
リハリを付けた教育予算となっている。今後の教育予算を考えるに当
たっても、こうした方針を堅持し、教員給与、国立大学法人運営費
交付金、私学助成のスリム化と配分方法の大胆な見直しを行う一方、
そこで生じた財源を教育の質の向上、教育再生に資する予算にシフ
トさせ、メリハリ付けを一層強化していく必要がある。

(2) 科学技術予算について
厳しい財政事情の下、例外的に伸びが確保されてきた科学技術予
算について、国民の理解を得つつ、その効果を最大限に引き出していく
ためには、引き続き選択と集中を強化するとともに、研究費の重複や研
究費の不正使用問題への対応について手を緩めることなく、着実に実
施していく必要がある。

研究費の重複や特定の研究者への過度な研究費の集中を排除す
るために、2008年1月からの供用開始を目指して、府省共通研究開
発管理システムが開発されているところである。本システムの供用に当
たっては、研究者の研究業務に対するエフォート(研究、教育、管理運
営等の業務に従事する時間配分)の管理を推進するのみならず、研究
資金の配分状況に関するデータを原則として国民に公開することなど
により、その透明性を向上させるべきである。

さらに、研究費の不正使用を防止するために、関係府省・資金配分
機関・研究機関が一体となって不正を防止する体制を構築するととも
に、研究費の管理・監査体制が適切に運用されるように随時見直しを
行っていくべきである。

教育政策経費とは、文教予算全体から、機関助成的な予算である義務教育費国庫負担金、国立大学法人運営費交付金、私学助成を除いたもの。