『岩手日報』2007年6月2日付

教育再生会議2次報告 県内関係者から疑問の声


政府の教育再生会議(座長・野依良治理化学研究所理事長)は1日夕、首相官邸で総会を開き、第二次報告を安倍晋三首相に提出した。会議は、2007年度中に学習指導要領を改定し@必要に応じた土曜日授業実施などで授業時間数10%増A小中学校の徳育(道徳教育)の「新たな教科」への格上げを含む充実−を図ることなどを「4つの対応」と位置付け、政府に取り組みを促している。

政府の教育再生会議がまとめた第二次報告の最終案を受け、県内の教育関係者からは「現場感覚がない」「長期的な視点が必要」などと疑問の声が相次いだ。

相沢徹県教育長は論議の方向を「全体に現場感覚がなく、評論家的な考え方が多い」と述べた。土曜日の授業も可能にする学校週五日制の廃止は「授業時数を10%増やしても、学力向上の決定打となるか分からない」と懐疑的。県内でも取り組む小学校の英語教育は早期に取り組む効果があるとする一方、「指導する教員の確保など十分な体制づくりが前提」とする。

岩教組の佐藤淳一書記長も授業時数増について「『ゆとり教育』などの検証が先。学力が低下しているとすれば、子どもを取り巻く環境の変化も考えなくてはならない。トータルにものを見ず、授業時数だけを増やすのは短絡的だ」と批判。徳育を教科に位置付けることについては「学校活動や地域とのかかわりの中で体得することであり、教科の中で身に付くのか」と疑問を投げかける。

県PTA連合会の小野寺明美会長は週五日制の廃止について「5年しかたっていないのにまた変わるのかという印象」とし、「報告をすぐに政策に結びつけるのではなく、将来子どもをどのように育てるのかという長期的な視点で考えてほしい」と注文する。

国立大改革案の入学定員縮減案について、岩手大の平山健一学長は「少子化の流れがあり、長期的に見てやむを得ない」としながらも、人材育成や産業活性化など地域に根差す地方大学の存在価値を強調。大学・大学院の再生については「機能分担が必要になる。各大学が得意分野を持ち、一層個性化を図るよう努めなければ」と危機感を強めている。