『朝日新聞』 2007年6月4日付

経済成長優先・賃金底上げ… 安倍政権初の骨太方針素案


大田経済財政相は4日、安倍政権として初めてとなる「骨太の方針2007」の素案を経済財政諮問会議(議長・安倍首相)に提出した。「労働生産性」に数値目標を設けて経済成長を優先する一方、最低賃金の引き上げなど「底上げ」も図る。財政再建や環境対策も盛った。不良債権処理や郵政民営化などを掲げた小泉政権に比べ、「総花的」になっている。

骨太の方針は、月内に閣議決定される予定。来年度予算編成など経済財政運営に反映される。

労働生産性は、就労者1人が一定時間に働いて生み出す国内総生産(GDP)を示したもの。過去10年間の対前年比伸び率は平均年1.6%増だったが、骨太の方針は、5年後に年2.4%増に引き上げることを掲げた。

「底上げ戦略」の柱である最低賃金の引き上げについては「政労使の合意形成を図る」とした。

成長戦略の具体策として、生産性の低い中小企業やサービス産業を再生させるため、国による「地域力再生機構」を創設。IT(情報技術)を活用した在宅勤務労働者を、10年までに倍増させる計画を盛り込んだ。

研究拠点の国際競争力の向上を狙い、大学・大学院に支給している運営費交付金の配分方法に競争原理を取り入れるよう見直しも求めている。税制の考え方については「生産活動への意欲を阻害しない」税制への改正の必要性をうたった。法人税率引き下げの必要性をにじませたものだ。

国際戦略では急成長するアジアとの連携を重視し、羽田空港の国際化・24時間化を盛り込んだ「アジア・オープンスカイ」の実現をうたった。

ただ、世界貿易機関(WTO)や経済連携協定(EPA)については外務省や農林水産省などとの調整が難航、素案には盛り込めなかった。