http://www.muroran-it.ac.jp/saisin/070601seimei/070601seimei.pdf

政府諸会議における大学・大学院改革に関する提言等に懸念を表明する(緊急声明)

室蘭工業大学は、数少ない国立の工業大学であり、その前身の一つである札幌農学校工学科の設置から数えて120 年、もう一つの前身の室蘭高等工業学校から数えて間もなく70 年を迎える伝統ある単科大学であります。これまで約26,000名を越える卒業生を輩出するとともに、工学分野の教育研究を担い我が国が標榜する「科学技術創造立国」を支える役割を果たしてまいりました。

法人化後は、毎年課される国立大学法人運営費交付金の約1%の削減、総人件費の1%削減など厳しい状況にもかかわらず、教育の高度化・実質化、研究の重点化・特徴化、学生支援の充実、地域を重視した社会貢献活動の推進など、様々な改革に取り組み,中期目標、中期計画を着実に実施しているところです。特に、地方にある工学系の単科大学として、地域の企業等との共同研究などに実績を挙げており、地域の活性化に大きな貢献をしております。

さて、現在、経済財政諮問会議や規制改革会議、教育再生会議等の政府諸会議において、大学・大学院改革に関する様々な提案がなされております。特に、経済財政諮問会議における国立大学への運営費交付金の配分ルールの見直しには多くの議論、提案がなされ、国立大学の存続基盤を大きく揺り動かすものとなっています。

このような中で,国立大学協会では4月11日に「深刻な危機感」を表明したところであります。また,各地の新聞等でもこれらの提案について多くの懸念が表明されており、経済財政諮問会議等における提案については、幅広い教養を備えた人材育成は困難なものとなるほか、自由な発想による萌芽的研究や基礎研究の糧をつぶすことになる恐れがあり、我が国の教育「百年の計」を考えれば疑いを持たざるを得ません。

我が国の持続的な発展のためには、地方も含めた調和ある発展が最重要課題であります。これまでの実績が示すように、地方の活性化に果たす地方大学の役割は大変大きく、大学の存続が危うくなることは、とりもなおさずその地域の産業、経済の衰退を招くことになります。

このようなことから、地方大学の運営費交付金の大幅な削減につながるような配分ルールの見直しを行わないよう強く求めるものであります。

今後,本学が地域の知の拠点としての役割と責任を十分に果たせますよう,関係各位の更なるご理解とご支援をお願いするものであります。

平成19年6月1日
国立大学法人室蘭工業大学長
松岡健一