『朝日新聞』2007年6月2日付

国立大授業料に格差を提言 財政審の建議案


財務相の諮問機関「財政制度等審議会」(西室泰三会長)が6日に尾身財務相に提出する意見書(建議)の原案全文が1日、明らかになった。ほぼ一律の国立大の授業料を大学や学部ごとに見直すよう求めたほか、小中学校の統合推進による教育コストの縮減を提言。医療・地方歳出の抑制を求めているのも特徴だ。

意見書は「08年度予算編成の基本的考え方について」と題しており、来年度予算への反映を求めるものだ。

1日に委員に示された原案では、足元の財政状態について、税収増などで財政健全化に一定の進展がみられるものの、約83兆円の07年度一般会計予算のうち、新規国債発行額はなおも25兆円を超えることを指摘。「大きな負担を将来世代に先送りする異常な状態が続いている」とした。

また、より積極的に財政健全化に取り組む欧州諸国の事例について「多くの示唆を含む」と記し、日本でも厳しい財政再建目標を新たに設定する必要性を示唆した。

個別の歳出項目の見直しも求めている。

教育予算については、現在は国立大の学生1人当たり年間180万円の国費が投入されている一方で、国立大の年間授業料は基本的に53万5800円で横並びになっているとし、見直しを訴えている。背景には、医学部など理系が高めの私立大を参考に授業料に差を設けるべきだとの考えがある。ただ、委員の間には「家計の負担が増える」といった異論が残っている。

また国立大の運営費交付金についても、大学の実績などに応じて配分する競争的な仕組みへ大胆に見直す必要性を指摘。小中学校をめぐっては、児童生徒数が減っているのに学校統合が進んでおらず、1人当たりの公費や教職員数が多すぎるとして、「統合の推進」を盛り込んだ。

医療費については、価格の安い後発医薬品(ジェネリック医薬品)の利用が米国などの3分の1にとどまっていることを強調。先発品を後発品に振り替えることで1.3兆円程度の節約の余地があるとしている。

また地方公務員の人件費抑制も訴えている。運転手などの技能労務職が民間の給与水準を大幅に上回っているため「地域の民間給与水準を適切に反映する必要がある」とした。