『宮崎日日新聞』社説 2007年6月2日付

国立大交付金 効率主義で地方切り捨てるな


宮崎大など地方の国立大学法人の将来について、愕がく然ぜんとした読者も多かったに違いない。

財務省が大学への補助金である運営費交付金の配分方法を「成果主義」に改め、宮崎大などでは本年度予算と比べて5割以上も減少するとした試算である(本紙5月22日付)。

試算によれば、東大や京大など大規模な総合大学で交付額が増える一方、全体の85%に当たる74の大学では減額になるという。

運営費交付金はほとんどが人件費などランニングコストに当たり、試算が適用されれば経営破は綻たんは免れない。

地域に貢献度の高い国立大学を「効率主義」で切り捨ててはならない。

■配分に競争原理導入■

運営費交付金は、国立大の収入の半分近くを占め、教員数など規模に応じて配分。人件費や日常の教育・研究費として使われている。

大学法人化後は毎年度1%ずつ減額され、一方で競争的研究費の割合が高くなってきた。

ちなみに宮崎大の交付金は約100億円で、予算全体の約40%に当たる。

財務省の提案は、国際競争力を高めるため、基盤的経費の配分にも競争原理を導入し、資金の「選択と集中」を促そうというものだ。

経済財政諮問会議の民間議員から提案されたのがきっかけで、従来の一律的配分を再検討。研究成果など実績重視の必要性を強調している。

試算によれば、競争的経費である科学研究費補助金(科研費)の配分実績で運営費交付金を再配分すると、現在より配分が増えるのは東大など13大学だけで、74大学は減額となる。

中でも教員養成が目的の教育系大学の減額幅は大きく、1割以下になる大学も出てくるという。

■多岐に及ぶ地域貢献■

これに対し国立大側は、試算が実行されると成果の見えやすい分野だけが評価され、基礎研究や自由な発想による研究の芽がつぶされる、と反論。

産業基盤の弱い地方大学、教育系大学の経営困難は必至で、露骨な成果主義導入の動きに危機感を深める。

財務省側は「努力と成果に応じた配分」と言うが、大学は産業界の下請けではない。

企業にすぐに役立つ応用研究ばかりを評価するような一面的な議論では、国の将来を誤りかねない。

人文系の研究や教養分野、また基礎的研究領域など長期に、地道に取り組める土壌の整備は不可欠だ。

また教育という視点も忘れてはならない。教員養成などの人材育成はそもそも競争になじみにくく、すぐに成果が出なくても大学の役割として極めて重要なことは言うまでもない。

諮問会議の民間議員からは「努力しない大学がつぶれるのは仕方がない」「全都道府県に国立大が必ず一つ必要なのか」との声も聞かれる。

議論があまりに乱暴過ぎる。私大の多い都市圏と違い、地方国立大の地域への貢献は多岐にわたる。医師や教員など地域を担う人材育成の中核は、大学が担うしかないのである。

都市と地方の格差が広がる中、地域と密着した地場産業の支援も大学に負うところが大きいのだ。

各分野に拡大する効率主義は、地方国立大学の切り捨てにつながりかねない。分権時代に見合う仕組みに転換させていかなくてはならない。