『琉球新報』2007年5月29日付

「恵まれた地域特性武器」 森田孟進琉大学長インタビュー


1999年に学長に就任し、今月いっぱいで退任する琉球大学の森田孟進学長に、8年間を振り返って印象深かったことや今後の課題などについて聞いた。 ―これまで取り組んできたことは。

「難関だったのは法務研究科(法科大学院)の立ち上げ。取り組みが遅れ、立ち上げにあたって問題になっていたのは教授をそろえることだった。産業界や沖縄弁護士会など地域の協力や、琉大の歴史に対する文科省の理解があり、法務研究科ができて非常によかった。司法試験の合格者ができるだけ多く出てほしい」

「観光科学科が国立大学として初めてできた。ことし4月には法文学部の経営学専攻を産業経営学科として独立させた。観光関係の2学科を基に来年、観光産業科学部(仮称)を立ち上げる」

「学長になって印象に残っているのは開学50周年記念事業だ。後援財団や同窓会などが募金活動をしてくれて、50周年記念館と研究者交流施設が合築された。同事業では国際交流を推進した。学長就任時は海外の協定大学は18だったが、外務省の支援もあって現在は57になった」

―今後の課題は。

「農学部で泡盛学の寄付講座を来年4月から始め、それを基に講座開始の3年後ぐらいに発酵科学科(仮称)を立ち上げる準備を進めている。理学部に海洋生産学科、工学部に亜熱帯資源工学科(いずれも仮称)をつくる構想がある。いずれも沖縄の地域特性を強く打ち出したもの。琉大は沖縄の自然や歴史・文化の特性にしっかり根ざした教育研究で、極めて個性的な大学になる。競争と評価の時代に入り、それに耐えられる大学にならなければいけない」

―2004年に国立大学法人になった。法人化の影響は。

「格差が拡大している現状があり、危機意識を持たないといけない。東大、京大など国際的な場で活躍している所に特別な予算が行くのは当然。その中で地方の国立大学はどうするかだ。沖縄は地域特性に恵まれており、これを大事にするべきだ」

「国立大学の運営費交付金を教育研究成果に応じて配分するという話があるが、交付金は大学運営の義務的経費で、それを競争的にしたら弱小大学はつぶれる。地方の国立大学が衰退すると、地方の産業や文化も衰退する。県出身国会議員の皆さんに県唯一の国立大学の交付金を削ったら大変との認識を持ってもらい、国会で発言してほしい」

―退任後は何を。

「沖縄戦に関する本を執筆する。自らの体験だけでなく、当時の資料も押さえてノンフィクションの形で一冊書きたい」

(聞き手 徳元謙太)