時事通信配信記事 2007年5月28日付

●学力向上の具体策提言=再生会議2次報告原案


政府の教育再生会議(野依良治座長)がまとめる第2次報告の原案が判明した。(1)学力向上(2)心と体の調和のとれた人の育成(3)大学・大学院の再生(4)財政基盤の在り方―の四つの大きな柱を設定。28日の合同分科会で詰め、6月1日の総会で安倍晋三首相に提出する予定だ。

◇ゆとり教育は見直し

原案はまず、「ゆとり教育」の見直しと学力向上の具体策を提言。第1次報告で打ち出した「授業時数10%増」目標へ向け、夏・春休みの活用、2学期制導入、朝の15分授業、7時間目の設定、土曜日授業を行うことなどを組み合わせて「教育委員会や学校の弾力的な授業設定」を図る。

このほか、▽教科書を質量ともに充実させるなど「分かりやすく魅力ある授業」▽教職員のめりはりある給与体系、人材確保法の趣旨を尊重した処遇充実などによる教員の質向上▽学校の課題に教委が取り組むための危機管理体制の整備、指導主事や警察官(OB)、弁護士、臨床心理士・精神科医、福祉司らが参加する学校問題解決支援チーム(仮称)の創設▽学力不振校への特別支援―などを盛り込んでいる。

「人の育成」をめぐっては、「徳育」を「従来の教科とは異なる新たな教科」と位置付けた上で、点数評価はせず小学校同様に中学校も免許は設けず学級担任が指導し、「多様な教科書と副教材を機能に応じて使う」としている。緊急アピールを見送った「親学」については、「親の学びと子育てを応援する社会」へ向け、子育て講座や父親の子育て参加への支援、中高の家庭科を活用した子育て学習、幼児教育の将来の無償化に関する総合的検討などを提唱した。また、小学校での1週間の自然体験、中学校での1週間の職場体験活動、高校での奉仕活動必修化なども求めた。

◇大学の9月入学促進を

大学・大学院改革については、大学入学年齢の弾力化、国立大の入試日分散・複数合格、大学入試センター試験の資格試験化や年複数回実施、高卒程度認定試験の在り方など、「入試の多様化、弾力化」を検討するとしたほか、大学・大学院の国際化に向けて「9月入学を大幅に促進する」ことを求めている。大学院重点化対象国立大の理工系大学院では内部進学者を最大3割程度に抑えることを目指す。国立大の改革としては、「教授会万能の意思決定システムの廃止」や、学長選挙の廃止と学長選考会議による決定システム導入を唱えている。

教育財政をめぐっては、めりはりのある教員給与体系を目指し、「一律4%の教職調整額について教員の勤務実態に合わせ支給率に差をつける」「休日4時間以上勤務で日額1200円の部活動手当の大幅引き上げ」などを提案。高等教育財政についても、▽競争的資金の拡充と効率的配分▽寄付金や共同研究費に係る優遇税制の充実強化など自助努力を可能とするシステム改革▽「研究面」「教育面」「改革への取り組み」の評価に基づく国立大学法人運営費交付金の傾斜配分―などを促している。

◇12月に3次報告

12月の第3次報告に向けた検討課題では、(1)学校や教育委員会の評価制度(2)教員養成、教員採用など教員の資質向上(3)現行の6・3・3・4制の在り方(4)教育院(仮称)構想(5)多様な大学入試の在り方(6)省庁総がかりで子どもの教育と成長発達を保障する体制の在り方―を挙げている。