『読売新聞』2007年5月27日付

地方大の経済効果は400億円超
文科省が試算 再編・統合求める財務省に「対抗」


文部科学省は、地方の国立大が消費や雇用を通して、1大学あたり年間400億〜700億円の経済波及効果を地域に及ぼすと試算した。

同省がこうした試算をするのは初めて。地方の国立大を巡っては、財務省が、主要財源である運営費交付金の配分に成果主義を導入し、再編・統合を進めるよう主張している。文科省は今回の試算を基に、地方大の役割を強調する方針で、議論が過熱しそうだ。

今回の試算は、文科省が財団法人「日本経済研究所」に委託。付属病院を持つ総合大である弘前、群馬、三重、山口の4大学を対象に調査が行われ、今月、報告書がまとめられた。

例えば、学生数7017人、教職員数2949人(2006年5月現在)の群馬大の場合、飲食費やアパート賃貸料など教職員・学生が消費する額を176億円と試算。研究資材の購入など大学による消費なども合わせると、総額は393億円となり、農林水産業などへの間接的な効果も加えると、全体の経済効果は597億円となった。同様に弘前大の経済効果は406億円、三重大は428億円、山口大は667億円。また、大学関連の雇用者数は、各大学とも県全体の約1%を占めていた。

今回の試算について、弘前商工会議所は「大学は、役所、自衛隊と並ぶ“主要企業”」と述べ、「もし大学がなくなれば、若者がいなくなって街から活気が消え、経済面以外の影響もはかりしれない」と訴える。

これに対し、財務省は「国際的な競争力をつけるため、全国に散らばっているヒト・カネを集約化すべき」として、現在87ある国立大学のさらなる再編・統合を求めている。今月、優れた研究をした大学により多くの運営費交付金を配分する方式での試算を公表。この方式では大半の地方大の運営費交付金が激減するという結果が出ていた。