『毎日新聞』2007年5月26日付

教育再生会議:成績不振校に支援を 第2次報告原案


政府の教育再生会議が近く決定する第2次報告の原案が25日、明らかになった。小学校で集団体験活動、中学校では職場体験活動の実施をそれぞれ求めたほか、「徳育」(道徳教育)についても通常の教科とは異なる「新たな教科」化を掲げ、規範意識の養成を図った。また、学力向上に向け、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の成績不振校に予算・人員を重点配分するよう要請。第1次報告で掲げた「授業時間数10%増」具体化のため、土曜授業や一日7時間授業も可能とするよう提言した。

原案は「公教育再生に向けた更なる一歩と『教育新時代』のための基盤の再構築」と題したもの。28日の合同分科会で最終調整され、来月初旬に開かれる総会で正式決定される。基本的な考え方として、▽徳育(道徳教育)▽大学・大学院の改革▽教育財政基盤のあり方−−を重点的に提言する方針を打ち出した。

「徳育」は点数評価の対象とはしないなど、従来の教科とは異なる「新たな教科」と位置付けるよう提言したうえで、「多様な教科書と副教材をその機能に応じて使う」とした。文部科学省検定教科書の導入に含みを持たせたとみられる。第1次報告で示された「高校での奉仕活動必修化」に加え、小学校では集団宿泊体験や自然体験・農林漁業体験活動、中学校では職場体験活動を各1週間実施するよう求めた。

一方で、初等中等教育に関する財政政策では「機会平等を確保し、(教育)格差の固定化を回避」との方向性を明示。国と教育委員会に、全国学力テストの結果を徹底検証したうえで、学力不振校には予算や教員定数の面での支援を求めた。

大学・大学院改革では複数の大学が大学院を共同設置したり、一つの国立大学法人が複数大学を設置管理する仕組みづくりを文科省に要請。財政面では国の国立大学に対する運営費交付金を実績評価で傾斜配分することを求めた。

さきに緊急提言を見送った「親学」に関連しては、妊婦検診や子どもの検診の場を活用した子育て講座の開催や、中学・高校の家庭科で子育ての楽しさを教えることを提唱しているが、「母乳による育児」の奨励などは見送られた。【平元英治、佐藤丈一】

◇教育再生会議第2次報告原案要旨は次の通り。

1 学力向上 授業時間数10%増のため春・夏休み活用や土曜日授業の導入。7時間目を設けるなど、弾力的な授業設定▽教育委員会に「学校問題解決支援チーム」設置▽全国学力調査の結果を徹底的に検証、学力不振校に予算、定数、人事面で特別の支援。

2 心と体の調和 全学校で新たに徳育を教科化。小中学校の学級担任が担当。点数評価はせず、多様な教科書と副教材を機能に応じて使用▽小学校で集団宿泊体験や自然体験・農林漁業体験活動を実施。中学校で職場体験活動▽父親の子育て参加への支援や妊婦検診を通じた「親の学び」、子育て講座の拡充▽中学、高校の家庭科などで子育ての楽しさを理解する機会を増加

3 地域、世界に貢献する大学・大学院の再生 9月入学の大幅促進▽教員任期制の拡大▽学部3年修了時から大学院進学する早期卒業制度の活用

4 「教育新時代」にふさわしい財政基盤の在り方 <初等中等教育>教育困難校への支援▽一律支給の教職調整額を勤務実態に合わせて差を付ける▽市町村ごとの教育費の内訳を「公教育費マップ」にして公表 <大学・大学院>競争的資金の拡充と効率的な配分▽国立大学法人運営費交付金を傾斜配分▽複数大学が大学院を共同設置できる仕組みを創設

※第3次報告に向けての検討課題 学校、教育委員会の評価制度▽教員の資質向上▽6−3−3−4制の在り方など