平成19年5月17日
国立大学長有志

教育再生会議座長 野依 良治 殿

                       意見書

 私たちはかつて旧帝大のいずれかに長く在職した経験を持ち、現在は、さまざまな特性をもつ中小規模の国立大学の学長として、法人化後の困難な時期にある国立大学を預かっています。
 このように大規模及び中小規模の国立大学の双方の事情に通じている複眼的な立場から、私たちは、政府系諸会議において大学・大学院に関して最近行われている論議の内容に強い危惧の念を抱いており、この意見書を緊急に提出するものです。貴会議での意見集約にあたり、私たちの共通認識である下記2点に、是非ともご配慮くださるようお願いいたします。

(1)国立大学が全体として培ってきた学問的多様性や地域特性文化は、21世紀の我が国を強靭で美しい国とするために必須です。世界的な研究拠点となる大型大学は確かに必要ですが、その他の国立大学を切り捨てて良いということにはなりません。それは、人体から手足等を切り取って頭脳と心臓だけを残すにも等しい愚行です。「国立大学には旧帝大とそれに続く少数の大学があれば、それで十分だ」という意見は暴論です。

(2)国立大学は3年前に6年間に亘る中期目標を設定した法人制度に移行され、そのはじめての評価が平成20年7月から始まります。この評価が終了する以前に、運営費交付金の配分についての大きな枠組みの変更を新たに提言するのは、政策の一貫性を欠いた、不合理極まる短絡的行為です。マラソン・コースを走らせておいて、折り返し地点から先は短距離レースに切り替えると宣言するようなものです。そのような事態になれば、政策への信頼が揺らぎ、高等教育システム全体が混乱して、わが国の教育・研究にとって由々しき事態を招くことは必定です。
                                            以上

国立大学長有志氏名・所属(五十音順)

江島義道 京都工芸繊維大学長・京都大学名誉教授
潮田資勝 北陸先端大学院大学長・東北大学名誉教授
梶田叡一 兵庫教育大学長・元京都大学/大阪大学教授
黒木登志夫 岐阜大学長・東京大学名誉教授
郷 通子 お茶の水女子大学長・名古屋大学名誉教授
小平桂一 総合研究大学院大学長・東京大学名誉教授
田隅三生 埼玉大学長・東京大学名誉教授