『東京新聞』2007年2月19日付

教員養成学部の志願倍率が低下
国立大


国立大学の教員養成系学部の志願倍率から「教員離れ」の傾向が浮かんでいる。いじめ問題での教員批判や政府の教育再生会議での「ダメ教師排除論」など、教員に対する逆風の強さが人気低下の背景にあると関係者は口をそろえる。教員の質の低下につながりかねないと懸念の声も出始めている。

文部科学省の集計では、出願期間の最終日だった今月六日午後三時現在、教員養成系の志願倍率は前後期合わせて四・一倍。前年度の確定志願倍率は四・九倍だった。

大学関係者によると、教員養成系学部の志願者は前後期ともに、教員養成系を受ける傾向が強く、前期の志願動向に実態が強く表れる。文科省の分類で教員養成系とされる学部を持つ三十七大学のうち二十八で前期の倍率が昨年より低下。二倍を割った状態の大学もある。

駿台予備学校の利倉和彦広報課長は「文系では経済、法学部の人気が高く、理系では工学部が盛り返している。経済状況が上向いていることで民間志向が強まっていると考えられる」と全体の傾向を分析。「進路を決める十、十一月に教師を取り巻くトラブルや問題が表面化し、教師が責められる姿を見て敬遠したのではないか」とする。

東京学芸大学の村松泰子副学長は「いい先生を養成しなきゃいけないと言われているときに人が集まらない。前後期合わせて数百人単位で志願者が減っている」と深刻に受け止める。「教育現場の厳しいイメージが先行している。中学生、高校生の時期から教師の魅力を伝えていくことが必要との声も内部では出ている」と語る。

信州大学教育学部は同省の集計で前期の志願倍率が一・九倍と二倍割れした。同大によると、最終的な志願倍率は二・一倍の見込み。入試課の横内三雄課長補佐は「教員は給与や処遇ではない別の要素で人を集めてきた。やりがい、生きがいだ。非難される側も悪いところがあるが、世間が後押ししてくれないと、やりがいも生きがいも生まれてこない」と話す。