教育基本法「改正」案の廃案を求める岐阜大学教職員有志アピール

 岐阜大学に学び,働く,学生・教職員の皆さん、そして 岐阜県 民の皆さん。
私たち岐阜大学の教職員有志は,学校教育に携わるものとして,現在,参議院
に送付されている教育基本法「改正」案が,その内容,審議手続きから見てあ
まりにも多くの重大な問題を含んでいると考え,国会に対してこれを廃案にす
るよう強く訴えるものです。


1. 内心の自由と学問の自由を脅かす

 政府提出の教育基本法「改正」案 (以下、「改正」案)は、現在の教育基本法
第 10条にある、教育は「国民全体に対し直接責任を負って行われるべきもので
ある」の文言を削り、代わりに「この法律及び他の法律の定めるところにより
行われるべきもの」としています(「改正」案第16条)。政府が教育振興基本計
画を定める(「改正」案第17条)こととあわせて考えれば、国が教育の条件だけ
でなく、内容にまで基準を設定し、その達成度評価とそれに基づく財政配分を
通して統制できる仕組みが作られています。「改正」案第2条に新たに付け加え
られた、教育の目標(「我が国と郷土を愛する」など)は、この流れの中で評価
されるとすれば、各自が自由に考えるのではなく、ある一定の基準に沿った考
えを強制させられることも予想されます。これは、学問の自由を大きく脅かす
ものであり、さらには学生が学び判断する内心の自由をも侵す危険性を持って
います。


2. 緊急の教育問題を最優先するべきである

 現行の教育基本法は、第二次世界大戦の反省に基づき、憲法と一体となって
国民一人ひとりの自主的・自律的な人格形成の営みを保障するもので、「教育
の憲法」と呼ぶべき重みを持つ法律です。しかしそういった重要な法律を、な
ぜ今変える必要があるのかについて、国会の議論も国民的な議論も不十分であ
ることは、各種の世論調査でも示されています。一方、現在報道されている、
学力問題、必修科目未履修問題、いじめによる自殺など、教育問題の解決は急
務の課題です。しかし政府は、国会で「基本法とは別問題だ」とするだけで、
なぜ今「改正」案が必要なのかには答えていません。今取り組むべきことは、
教育現場が直面する課題の解決への取り組みであるべきです。

 「改正」案については、多々の議論が存在しますが、少なくとも以上の 2点
について、国会は慎重かつ十分なる議論を尽くすべきだと思われます。性急な
「改正」をすれば、今後に大きな禍根を残すことになります。私たちは、今国
会において政府提出の教育基本法「改正」案を廃案し、教育をめぐる国会での
議論について一から出直すことを強く求めるものです。

【アピール呼びかけ人】
長野宏子
(教育学部)
竹森正孝
(地域科学部)
別府哲
(教育学部)

【賛同者】
48名(2006年12月2日現在)