『日刊工業新聞』2006年8月31日付

文科省の07年度概算要求、トップ30拠点に76億円−基幹技術は大幅増


 文部科学省の07年度の科学技術概算要求は、科学技術人材の育成・確保策
を大きな柱にし、政府の経済成長戦略の推進に沿ったイノベーションの創出と
国家基幹技術などの戦略重点科学技術分野への重点的な投資を求めたのが特徴
的だ。イノベーション創出では2010年までに世界トップレベルの研究拠点
を30カ所構築するため、新規に76億円を要求。 07年度はすでにトップレ
ベルに達している研究グループに資金を集中投入し、世界トップレベルの研究
拠点構築を加速する。

 一方、国家基幹技術分野は、宇宙輸送システムで前年度比74%増の443
億円、海洋・地球観測探査関連で同132%増の338億円、高速増殖炉サイ
クル技術で同29%増の310億円、次世代スパコンで同145%増の87億
円、X線自由電子レーザーで同237%増の77億円と、いずれも大幅な増額
要求となった。

 競争的資金は、科学研究費補助金2106億円、戦略的創造研究推進事業5
21億円、科学技術振興調整費474億円、グローバルCOEプログラムで新
規に230億円、間接経費も126億円を要求し、トータルで11・1%増。

 新規案件では、基礎研究成果の実用化の可能性を見極め、一定期間の企業化
調査(FS)を実施するイノベーション可能性研究に35億円、産学連携にお
ける研究成果を切れ目なく実用化につなぐ仕組みの構築に5億円を要求。 公的
研究施設の民間企業の利用を促す先端研究施設共用型イノベーション創出プロ
グラムに45億円を求めた。

 分野別の新規事業では、ライフサイエンス分野で研究成果を実用化する橋渡
し研究の推進に30億円、ターゲットタンパク研究プログラムに74億円を要
求。 情報通信分野は高機能・超低消費電力コンピューターのデバイス・システ
ム基盤技術の開発に6億円、環境分野は21世紀気候変動予測革新プログラム
に36億円を求めた。

 ナノテク・材料では、ナノテク研究拠点の全国ネットワーク化を実現し、ナ
ノテクと他の研究分野との融合を目指すセンター整備に40億円を要求。 原子
力では、原子力施設や大学、民間研究所に処分されないでたまっている放射性
同位元素(RI)・研究所廃棄物の処分開始に向け47億円を盛り込んだ。

 地震・防災は、首都直下地震防災・減災特別プロジェクトに38億円、新興・
融合分野では異分野融合研究に10億円を求めた。

 このほか、粒子線がん治療の普及に必要な放射線腫瘍(しゅよう)医や医学
物理士、診療放射線技術などの専門人材の育成などに64億円、外国人研究者
の定着促進支援プログラムに2億円を要求した。