宮崎大学における教員任期制問題

会員の皆さんへ
             宮崎大学・木花地区過半数代表者 橋本 修輔
 
 現在、宮崎大学(住吉昭信学長:旧宮崎医科大学附属病院長)では、学長
の教員任期制導入に関する異常な言動が問題になっています。
 宮崎大学では、任期制については人事制度等委員会(委員長:副学長)で
検討され、昨年11月には同委員会の任期制度検討WGが検討結果(WG答申)
を委員長に提出し、現在、それについて検討中です。
      (医学部・病院地区は、既に、任期制が導入されています。)
《WG答申の主な内容》
 (1)新規採用者から全学的に全員に直ちに任期制を導入することは難しい
    状況にある。
 (2)当面は、流動型、研究助手型及びプロジェクト型の3タイプの中から、

    各部局等がふさわしい任期制の導入を図ることとする。
 然るに、委員長は、その答申を委員会で審議する前に、独断で、答申内容に
ついて役員会に意見伺いを行いました。その後、役員会で答申内容を検討し、
本年2月23日開催の役員会は、別記の「教員任期制に対する宮崎大学長メッ
セージ」を重く受け止め、人事制度等委員会委員長宛に、次のような検討要請
を行いました。
《役員会からの検討要請事項》
  人事制度等委員会は新規採用者及び学長管理定員を活用した教員採用に
  テニュア・トラックを含めた任期制を導入する方向で再検討すべきである。

 
 このように委員長が委員会で審議する前に、独断で役員会にお伺いする行為、

また、それを受け、役員会が委員会に対し、委員会での検討の結論を決めるよ
うな内容の要請をするなど、民主的な議論を保障しない学長、副学長、役員会
のファッショ的行動は、とても容認できるものではありません。
 その後、各学部教授会で役員会の態度が問題となり、この間、人事制度等委
員会は開かれませんでしたが、近く、委員会でようやくWG答申について議論
が始まるようです。
 しかしながら、学長は、人事制度委員会での任期制に関する結論を待たず、
3月と4月、2ケ所の学内共同施設(センター)の教員人事を任期付き採用で
強行しました。その際、本来、採用決定(内定)の前に、「宮崎大学任期付き
教員の雇用期間に関する規程」を改正しなければならないのに、それを辞令交
付直前にしました。
 これは、遅くとも、採用選考(内定決定時)で、応募者に予め、労働条件を
明示しなければならないとする労働基準法第15条及び大学教員等任期法第5
条に違反したことなります。
 過半数代表者は学長に対して、この法律違反の事実を認め、道義的責任をと
る意味で全職員に陳謝するよう伝えましたが、現在まで無視しています。
 また、学長は、各部局等へ視察の際、教職員との意見交換会等の公的な場で、

任期制に関連して、以下のような問題発言をしています。
(1)人件費の効率的な活用には任期制が必要。
(2)私の意見に反対なら、大学を出ていってくれ。
(3)組織の方針の組織とは、法人、もっと言えば僕、学長のことだ。

 最近、教職員の中から、このような学長(役員会)の下では、「とてもつい
ていけない、やってられない」という声や「学長を解任しよう」との意見も出
てきています。

 以下に、前述した2月23日開催の宮崎大学役員会が重く受け止め、任期制
導入の根拠とした「教員任期制に対する宮崎大学長メッセージ」を載せます。
 私は、重く受け止める内容ではなく、薄っぺらな品位に欠けた内容と思いま
すが、いかがでしょうか。
 皆さんからの意見をお待ちしています。

**「教員任期制に対する宮崎大学長メッセージ」**
                     (2006.2.23 役員会)
【任期制に対する学長のメッセージ】              
 
 学者は、年を取れば円熟しますが、「学術の進歩」は、円熟の外に、新鮮な
頭脳で新しい方面を開拓する必要があり、私を含めて、老・成人には、この新
しいことへの挑戦・新分野の開拓は、先ず大体において望み得ないことであり
ます。若い研究者(後継者)は、はじめはどうしても見劣りがする(ように感
じます)が、それを凌駕して、新鮮な頭脳で新しい方面を開拓してくれること
の重要性を認識しないといけません。そういう意味で、いわゆる大家が「重鎮」

として何時までも君臨することは長い目で見ると組織の衰退を招くことになり
ます。非難、嘲笑の的になりながらも、その職に、あるいは地位に齧り付き、
学術の発展を阻害してはならないのであります。しかるべく後進のため道を開
くべきでありましょう。そういう意味で、かって田中舘愛橘氏の辞意表明をき
っかけに、定年制が設けられたものと聞いております。

 任期制もそれと同じで、日進月歩する科学の現状を考えると、ことにその事
が痛感させられます。任期制は、人事の流動性を担保し、人事を硬直化させな
いために必要であります。大学の人事に新陳代謝作用を導入するためと、その
組織の方針に疑問を持つ人に、新天地を求めるきっかけを与える意味でも、極
めて意義深いものと思っています。任期が終わるに当たっての、外部委員を加
えた再任評価委員会による再任審査は、必ずしも「首を斬る」ためのものでは
無く、しかるべく教育、研究をやっておれば、その限りではないのであります。

任期制が、息の長い基礎研究に取り組む、あるいは優れた研究者の足を引っ張
り大事な研究が中断することがないように配慮することも必要で、それには、
良い実績を上げた任期制研究者を、定年制すなわち「テニュア・トラック」に
載せるという選択肢も導入すべきでしょう。評価に当たっては、あまりにもペ
ーパー生産のみに偏るのは問題で、教育や大学運営への貢献などを考慮に入れ
て評価する必要がありましょう。

 定年制の既得権を認めるとしても、(再任)評価委員会により業績を評価し
て、退任を勧告する制度を容認すべきだと思います。また、定年制の既得権を
有するものが任期制を選択したら、その教員に、インセンテイブを与えること
も早急に検討しなければなりません。そうすることで、若い研究者だけ割を食
うと言うマイナスイメージを払拭する必要があると思っています。さらには、
教授になったら安穏として、「研究もしないで、定年がくるのを待っている」
という非難を退ける必要がありましょう。

 私は、ある期間過ぎて評価されるという事実が、本人を「怠惰に過ごす」こ
とから脱却させ、競争的環境で、緊張感を持って教育・研究に取り組む意味で、

極めて有意義であると思っています。人間は、怠惰に駄し易い動物で、カント
も言っているように、人間のそのような「傾向性」を克服するためにも、何ら
かの外圧が在った方が良いと思っています。その効果が、大学の活性化に果す
役割は極めて大きいと思います。

 旧宮崎大学では、教員の選考などについて、「昇任人事」と称することが、
再々助教授、教授にも行われています。科目担当の助教授(教授がいない)な
ども含めて、選考委員会を作り、教員選考規程に従って「公募」制を原則とし、

加えてこれからの採用に当たっては「任期制」導入すべきであると思っていま
す。そうでなかったら、全てではありませんが、早晩年功序列制で昇進し、
レフェリーのいる学術雑誌に年余にわたって研究論文の一編も発表せず、また
大学の運営にも積極的に参加せず、殆ど大学の発展のために貢献しないような
人でも、定年まで教員として残られるというのは、人件費削減が問題になって
いる現状では、大学の財政上のことは勿論、大学の教育・研究の質を落とし、
若い教員や学生に悪影響をもたらし、組織の衰退を招くことになります。

 従って、私が申すまでもなく、上に述べたようなことを勘案し、人事はその
組織、すなわち大学が今後どのような方向を目指すか、など将来構想をしっか
りと踏まえ、その組織で生きていく人たちで、組織の生き残りと共に自らの生
き残りをかけて、真剣に考えてきめるべきです。
                               (以上)
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連絡先  宮崎大学工学部 橋本 修輔
メール  hashishu@cc.miyazaki-u.ac.jp
                    以上