新首都圏ネットワーク
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《『行革推進法案』関連情報》No.14=2006年3月13日

          行政改革推進法案の公表について


              国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

 政府は3月10日、「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進
に関する法律」(行政改革推進法)を閣議決定し、国会に提出した。本事務局
は同法案全文を入手したのでウェッブサイト(http://www.shutoken-net.jp/)
上に公表する。

 同法案の危険な特徴ならびに国立大学との関わりについて以下の諸点を指摘
しておく。

 第1に、法の目的における市場化テスト法案(本情報No.13参照)との
相補性が指摘される。市場化テスト法案では、その趣旨に「国の行政機関等又
は地方公共団体等が自ら実施する公共サービスに関し、その実施を民間が担う
ことができるものは民間にゆだねる観点から、これを見直し、民間事業者の創
意と工夫が反映されることが期待される一体の業務を選定して官民競争入札又
は民間競争入札を付すことにより、公共サービスの質の向上及び経費の削減を
図る改革を実施するため」(第1条)とある。一方、行政改革推進法案では、
その基本理念として「政府又は地方公共団体が実施する必要性の減少した事務
及び事業を民間にゆだねて民間活動領域を拡大すること並びに行政機構の整備
及び合理化その他の措置を講ずることにより行政に要する経費を抑制し国民負
担の上昇を抑えること」(第2条)を掲げている。要するに、行政改革推進法
で人件費削減を強行し、それまで政府、地方公共団体、独立行政法人、そして
国立大学法人等が担っていた公共サービス領域の維持を困難に陥れた上で、
その領域を市場化テスト法案で市場化させるということなのである。

 第2に、法のなかに、内閣が行政改革を直接指揮する装置が組み込まれてい
ることに注目する必要がある。確かに、3月11日付朝日新聞が指摘するよう
に、「同法案は基本理念や今後の作業手順など最低限の枠組みだけを示したプ
ログラム法で、個別の制度設計はこれから」である。だが、そのことは今後の
検討によって各省庁など下からの意見が組み入れ得ることを決して意味しない。
同法が謳う「基本理念」は、「行政改革を総合的かつ集中的に推進する」行政
改革推進本部(以下、「本部」)によって直接実行に移される構造となってい
るからである(第68〜78条)。首相が本部長に座り全閣僚が本部員を占め
るこの「本部」は、「国の行政機関、地方公共団体、独立行政法人及び国立大
学法人等の長並びに特殊法人及び認可法人の代表者に対して、資料の提出、意
見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる」とされている。要す
るに本部長である首相は、行政改革推進の名の下に、各国立大学長に至るまで
直接指揮できるのである。しかもこのような強大な権限を有する「本部」の具
体的な業務規定は法律ではなく政令に委ねられるのである。この点でも、官民
競争入札等監理委員会(内閣総理大臣の任命)という強権的装置を用意する市
場化テスト法案との相補性が指摘されよう。

 第3に、国立大学法人との関わりでは、第53条で国立大学法人等が対象に
含まれるとした上で、人件費総額を「平成18年度以降の5年間で、平成17
年度のおけるその額からその100分の5に相当する額以上を減少させること
を基本」とする旨明記されている。また、第51条で国家公務員の給与制度の
見直しが提起され、人事院勧告制度を含めて抜本的な変革が企図されていると
判断される。

※法案はこちら