新首都圏ネットワーク
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《『行革推進法案』関連情報》No.10=2006年2月13日

  市場化テスト法案要綱・同全条文、行革推進法案概要の公表について

              国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局


 政府は2月10日、「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律案」
(以下、「市場化テスト法案」と略す)を閣議決定し、国会に提出した。一方、
同日、内閣官房行政改革推進事務局は内閣の行政改革推進本部の了承を得て、
「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律案(行政
改革推進法案)の概要」を関係機関に提示した。国立大学法人法反対首都圏ネッ
トワーク事務局はこれらの法律関係文書を入手したので、ここに公表する。行
政改革推進法案の閣議決定・国会提出は3月10日に予定されていると伝えら
れる。本事務局ウェッブサイト(http://www.shutoken-net.jp/)に公表される
文書は以下のとおりである。

行政改革推進法案概要
市場化テスト法案要綱
○市場化テスト法案(1条〜19条20条以降

 市場化テスト法案、行革推進法案という行革2法についての全面的分析と批
判は追って発表する予定であるが、さしあたり以下の点を指摘しておく。

1.行革2法は相補的な関係にある。

 行革推進法案が基本理念として「1.政府が実施する必要性の減少した事務及
び事業を可能な限り民間にゆだねて民間の領域を拡大すること 2.行政機構の
整理及び合理化等により、効率性を高めつつ、経費を抑制して国民負担の上昇
を抑えること」(概要)を掲げていることに対応して、市場化サービス法案で
は、その趣旨を「国の行政機関等又は地方公共団体等が自ら実施する公共サー
ビスに関し、その実施を民間が担うことができるものは民間にゆだねる観点か
ら、これを見直し、民間事業者の創意と工夫が反映されることが期待される一
体の業務を選定して官民競争入札又は民間競争入札を付すことにより、公共サー
ビスの質の向上及び経費の削減を図る改革を実施するため」(第1条)として
いる。両法は相補いながら、人件費削減を梃子とした公共サービスの解体とそ
の市場化を目指しているのである。

2.行革2法の対象は国立大学法人を含めて公的領域全体である。

 市場化サービス法案では、前掲の第1条で「国の行政機関等又は地方公共団
体等」とその対象を明記し、第2条2項で国の行政機関等を「国の行政機関、
独立行政法人、国立大学法人、大学共同利用機関法人、特殊法人」と定義して
いる。一方、行政改革推進法案概要では、総人件費改革(=削減)の対象とし
て、国の行政機関、独立行政法人、特殊法人等を列挙している。

3.行革2法は実施方法として政府の強権的指揮を明記している。

 市場化テスト法は、第4条で国立大学法人を含む国の行政機関等の責務とし
て、「公共サービスに関して見直しを行い、官民競争入札若しくは民間競争入
札又は廃止の対象とする公共サービスを適切に選定するほか、国の行政機関等
の関与その他の規制を必要最小限のものとすることにより、民間事業者の創意
と工夫がその実施する公共サービスに適切に反映されるよう措置するとともに、
当該公共サービスの適正かつ確実な実施を確保するために必要かつ適切な監督
を行わなければならない」ことを強要した上で、内閣総理大臣に「国の行政機
関等の長と協議して公共サービス改革基本方針の案を作成し、閣議の決定を求
めなければならない」(第7条1項)とし、2項以下でその基本方針の内容を
細かく規定している。そして、この基本方針の案の策定から公共サービス改革
実施の全過程を監理する組織として、強大な権限を持った官民競争入札等監理
委員会が内閣総理大臣の任命で設置されるのである(第37条)。

 一方、行政改革推進法案でも「行政改革を総合的かつ集中的に推進するため
に、内閣に、行政改革推進本部(仮称)を置く」(概要)とされ、その所掌事
務は「調整」と「監視」となっている。この行政改革推進本部の本部長は内閣
総理大臣であり、5年間の時限ではあるが政府が直接指揮することが法案で明
記されることとなろう。

4.市場化テスト法では、国立大学法人を含む国の行政機関等の組織の一部を
丸ごと解体し、民間に移行させることが可能となる。

 上記1と関連するが、「民間事業者の創意と工夫が反映されることが期待さ
れる一体の業務を選定して官民競争入札又は民間競争入札を付す」(第1条)
ということは、"一体の業務"を担う組織を解体することを意味する。同法第3
1条ではこれに対処するために、退職手当法の特例措置を設けている。だがこ
れは任命権者が停止あるいは解体された組織の職員を退職させて民間に異動さ
せることを容易にするために挿入されたと見るべきであろう。「任命権者又は
その委任を受けた者の要請に応じ」という第31条の文言はそのことを強く示
唆する。だが、一度停止・解体された組織に復帰できる保証はない。

5.行政改革推進法案はまだ閣議決定されている訳ではない。概要に示された
内容、市場化テスト法案との相補性を徹底的に批判し、市場化テスト法案もろ
ともに葬り去るために奮闘することが求められている。