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『日刊工業新聞』社説 2005年12月9日付 社説/第3期科学技術基本計画−人材を育てる場所をつくろう イノベーションの創出は人材をいかに育てるかにかかっている。 投資目標を設定するか否かで大詰めを迎えている第3期科学技術基本計画 (06―2010年度)では、「モノから人へ」を強く打ち出している。 「モ ノ」に偏りがちだった第1期(96―00年度)、2期(01―05年度)の 反省にたち、国際競争力を勝ち抜く「人」を育てる場を早急につくり出さなく てはならない。 産学連携が進むなか、イノベーションを支える人材が育っているのか。 科学技術創造立国を掲げた科学技術基本計画で、1万人のポストドクターが 生まれた。 しかし、十分機能しているとは言いがたい。 ポスドク後のキャリ アパスが見えず、活動の場がなかなか見つからない。 とにかく研究者の流動化が進んでいない。 とくに、産学連携が叫ばれている わりには、大学ならびに公的機関と民間企業の間で研究者の行き交いが足りな い。 産業界が求める人材と大学が送り出す人材のミスマッチもある。 こうした状 況を解消するためには、インターンシップなどの場を積極的に設ける必要もあ る。 産学連携の成否は人材で決まる。 大学発ベンチャーが直面する課題としては、 相変わらず設立時および現在とも「人材の確保・育成」が最も多い。 米国と比 べて、技術移転機関(TLO)全体のライセンス収入が3%足らずというのも、 コーディネーター役の人材が不足しているためだろう。 イノベーション能力を高める競争的資金についても、特定の研究者に偏りす ぎるといった傾向がある。 これでは若手研究者が育たない。 技能伝承が危ぶまれる07年問題を控え、技術者の育成も急がなくてはなら ない。 地域大学や高専と地場産業が連携し、モノづくり技術を伝える人材を育 てるのも一つの試みだ。 2010年までの第11期5カ年計画に走り出した中国では優秀な人材を積 極的に登用する「人材強国」戦略を推し進めている。 日本には国のビジョンが 感じられない。 「モノから人へ」の改革に挑むからには、省庁間の壁を乗り越 えた力強い取り組みが望まれる。 |