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新首都圏ネットワーク

「意見広告の会」ニュース280 (新首都圏ネット事務局による参照、抜粋)

** 目次 **
1 来年度の国立大入学金値上げはナシ
 5/12参院文教科学委員会
1−1 入学料標準額の改定を行わないこととしたところでございます。
中山文科相
1−2 文教委員会詳報(日本共産党・小林議員質問部分) http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0106/main.html
1−3 身動き取れない文科省
      簡単な注釈


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1 来年度の国立大入学金値上げはナシ
5/12参院文教科学委員会
○国務大臣(中山成彬君) この国立大学の入学金につきましても、従来から私立大学
の入学料の水準などの社会経済情勢の変化等を総合的に勘案して改定を行ってきたとこ
ろでございまして、最近の私立大学の入学料の平均額は低下傾向にありまして、国立大
学の入学料とほぼ同額になっているわけでございます。正にこのような状況から国立大
学の入学料は平成十四年度以降据置きとなっているわけでございまして、平成十八年度
入学者につきましても入学料標準額の改定を行わないこととしたところでございます。


1−2 文教委員会詳報(日本共産党・小林議員質問部分)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0106/main.html
○小林美恵子君 では、私は次に、こういう障害者の方でありますとか、障害をお持ち
でない方も含めまして、大学に進学するという観点でいきますと、重大な問題というの
はやっぱり学費の問題が重大だというふうに思います。そこで、今から国立大学の授業
料、入学金問題で質問させていただきたいと思います。
 私は今年の予算委員会で大学学費問題について大臣にも質問させていただきました。
大臣は、学費が家庭の年間消費に占める割合は決して小さな額ではないということで、
御自身のおいごさんのことを引用されながら、家計に負担となっているという御答弁を
されました。
 確かに、本当に家計に重い負担を強いているのが今の学費だと思います。今関係者の
間から、この二〇〇五年度の予算で国立大学授業料標準額が値上げをされて、それで今
度は入学金が値上げされるんじゃないかという不安の声が上がっています。
 そこで、私は改めて確認をしたいと思いますけれども、私が予算委員会で質問させて
いただいたときに、大臣は結果としてほぼ二年ごとに改定を行ってきているというふう
な答弁をされました。でも、その二年ごとの値上げというのは法人化されても変わらな
い決まりになっているのかどうか、その点をちょっとお聞きしたいと思います。
○国務大臣(中山成彬君) 国立大学の授業料及び入学料につきましては、従来から教
育の機会均等の理念を踏まえながら、大学教育を受ける者と受けない者との公平の観点
あるいは私立大学の授業料の水準など、社会経済情勢等を総合的に勘案して改定を行っ
てきた、これはこの前も答弁したとおりでございます。
 なお、二年ごとの改定という制度的なルールがあるわけではありませんで、私立大学
の状況など、その時々の社会経済情勢等を総合的に勘案して改定を行ってきたというこ
とでございまして、今後とも適正な水準の維持という観点に留意しながら、必要に応じ
て検討することとなるものと考えております。
○小林美恵子君 二年ごとのルールというのは、そういう決まりはないということを改
めて確認をさせていただきました。
 それで、お手元に資料が配られたかと思いますけれども、それを是非ごらんいただき
たいと思います。(資料提示)
 二〇〇三年度まででいきますと、随分小さい資料になっておりますけれども、これは
大学入学金の年度別、国立大学、私立大学の年度別の推移でございます。ブルーが国立
大学で、ピンクが私立大学になっています。二〇〇三年度まででいきますと、授業料と
入学金が毎年交互に値上げされています。
 それで、入学金の場合を見ますと、例えば二〇〇四年度でいきますと、国立大学が二
十八万二千円、そして私立大学は二十七万九千七百九十四円という形になっております
。この間、よく大臣も含め財務大臣も、学費の問題、入学金の問題も含めましてその値
上げの理由に、私学との格差を是正するためだというふうによく御答弁をされてこられ
ました。これでいきますと、この表を見ていただきますと、正にもう私学、私立と国立
の入学金においての格差というのは全くないという状態です。逆に言えば国立、全くな
いという状態ですよね。そういう状態でありまして、そういう今まで御答弁されてきた
私学との格差の是正というのはもう通用しないというふうに思うんです。
 この点で私はお聞きしたいと思いますけれども、入学金についてこれ以上値上げをす
るということはもうできないというふうに思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(中山成彬君) この国立大学の入学金につきましても、従来から私立大学
の入学料の水準などの社会経済情勢の変化等を総合的に勘案して改定を行ってきたとこ
ろでございまして、最近の私立大学の入学料の平均額は低下傾向にありまして、国立大
学の入学料とほぼ同額になっているわけでございます。正にこのような状況から国立大
学の入学料は平成十四年度以降据置きとなっているわけでございまして、平成十八年度
入学者につきましても入学料標準額の改定を行わないこととしたところでございます。
 いずれにいたしましても、繰り返しになりますが、入学料も含め国立大学の学生納付
金の標準額につきましては、今後とも、私立大学の状況などその時々の経済社会情勢等
を総合的に勘案しながら必要な検討を行ってまいりたいと考えております。
○小林美恵子君 ここに二〇〇三年度、二〇〇三年度ですかね、二〇〇三年度の文教科
学委員会での会議録がございますけれども、このときに政府参考人の方がこういう御答
弁をされています。近年、授業料と入学料を国立大学隔年で改定をしてきたという経緯
がございますが、厳しい経済情勢を踏まえて、平成十六年度の入学者、これは入学料を
上げる番ではあったんですけれども、今回は改定を行わないという、こうさせていただ
いたところでございますというふうになっております。
 この当時からいきますと経済情勢はどうかといいますと、厳しい経済情勢はどうかと
いうふうに考えますと、学費の問題で家計に占める割合というのは小さな額ではないと
いうふうに大臣も予算委員会で答弁をされました。そういう点では、経済情勢というの
は個々の家庭から見ても厳しい状態になっていると思います。それで私は、そういう意
味からも、次も入学金は上げないということで、是非強く要望をしておきたいというふ
うに思います。
 それでもう一つ、大学のいわゆる授業料の標準額値上げの問題についてお聞きをしま
す。
 昨年十二月の政府予算原案決定時に突然その方針が盛り込まれて、この四月からいき
なり値上げを行うというやり方、もう極めて問題だと関係者からの怒りの声が上がって
います。もう当然のことだというふうに思います。
 私が持ってまいりましたのは、東京大学と京都大学の学長さんがお書きになった文書
でございます。この東京大学の学長は、一月二十五日でございましたけれども、この標
準額の引上げが国立大学法人化が実施される最初の年に政府からあたかも当然であるか
のように提示されたことを東京大学は極めて遺憾に受け止めているとあります。また、
京都大学の学長は、二月二十二日でございますけれども、事務連絡という形で国立大学
に通知があって、国立大学の授業料標準額の改定はないものとして次年度の大学運営を
準備していたところへの突然の通知に大学運営は大いに混乱をしていると。
 少なくとも、平成十七年度予算に組み込まれた国立大学の授業料標準額の改定は各学
長にとって想定外の出来事であったというふうに言われています。つまり、大学の関係
者にとってみれば大変戸惑いと混乱を生じさせたというふうに思います。
 私はここでお聞きしたいと思います。こうした混乱を招いたということについて大臣
がどう認識をされているのか。そしてまた、今後、こういう周知期間が本当に短いやり
方で大学の学費について考えるということは、値上げをするようなやり方というのは今
後やっぱりやめるべきだというふうに思いますが、その点は、大臣、いかがですか。
○国務大臣(中山成彬君) 今回の標準額の改定というのは、昨年末の予算編成過程に
おきまして社会経済情勢等の変化を総合的に勘案して行ったものでございまして、改定
の方針が固まりました十二月に各国立大学法人に対してその旨を連絡したところでござ
いまして、この連絡を受けまして各大学は、平成十七年度の授業料の取扱いの検討や学
生、保護者に対する情報提供を行うとともに、授業料の改定を行うことを決定した法人
におきましては、学則の改正などの手続を取った上で、四月以降、新授業料で徴収を行
っているところでございまして、特に問題は起きていないと承知しておるところでござ
います。
 大いに混乱したとか、ちょっとオーバーな話になっているなと思うわけでございます
。これぐらいのところはやはり予想をして大学運営はやっていただきたいなと、このよ
うに思うわけでございます。
 なお、今後、こういった標準額を改定する場合におきましては、予算の編成の問題も
ありますからなかなか難しいんでございますが、より時間的な余裕を持ってお知らせす
る工夫ができるかどうかということにつきましては検討してみたいと考えております。


1−3 身動き取れない文科省
      簡単な注釈
 小林議員の質問にもあるように、入学金平均は国立大が私立大を上回っている。こん
な状態で国立大の入学金を値上げできるわけはないのだが、はっきりと文科大臣の言質
が得られたことはやはり重大と言わねばならない。議員はその場で確認を取っておくべ
きであったかと思われる。
 入学金ばかりではない。授業料値上げに関する衆院での中山文科相の次の発言に注目
しよう。
中山国務大臣 4/22衆院文科委員会
今回のことについて、法人化してすぐのことでしたから、混乱、まあ何をもって混乱と
するのか、多少の混乱というのは何をするにしてもあると思うんですけれども、余り遅
きに失したと。私学はどうなのかなと今ちょっと聞いてみたんですけれども、私学の場
合にはもっと早く値上げ等も公表しているというようなことも聞いているわけでござい
ます。
 そういう意味で、学生とか保護者の立場に立って、申し上げなければいけないときに
はやはり少し前広にお知らせするとか、そういったことも考えられるんじゃないかと思
うわけでございますが、基本的には本当に抑制的にやっていくということを前提にして
考えていきたいと思っております。
 公表が「遅きに失した」と述べている。ニュース前号でも紹介した「これぐらいのと
ころは予想して大学運営はやっていただきたい」という5/12発言は、前言を翻して
いるわけである。それはもちろん不当であるが、さらに「なお、今後、こういった標準
額を改定する場合におきましては、予算の編成の問題もありますからなかなか難しいん
でございますが」と述べていることにも、注目する必要がある。
 結論的に言えば、文科相が「なかなか難しい」と述べている通り、善し悪しは別とし
て現在のシステムの抜本的改革無しに「少し前広にお知らせする」などということは不
可能である。もし値上げを行うとすれば、今回の値上げ同様に3月31日ころに文科省
令を公布するしか方法はない。しかし、そこに現れた混乱は我々が厳しく指摘してきた
通りであり、文科相にしてもよほどの横着を決め込まない限り、その再現は困難であろ
う。
 結論的に言えば、意見広告を含めた今回の各方面での闘いは、目前の値上げを阻止す
ることは出来なかったが、来年以降の学生納付金(標準額)の引き上げを、事実上困難
にする地点にまで文科省を追い込んだ、と言いうるのではあるまいか。
 しかしその「地点」は、力関係のバランスによって定まる。野党の減少、国大協の様
相の変化、値上げ反対主体の後退等、値上げ反対側の力量次第で、再度・再々度の値上
げ(それに相関する交付金減、教育研究環境の悪化)を、我々は十分監視して行かねば
ならない。