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新首都圏ネットワーク

分析メモ:国立大学法人評価委員会による「国立大学法人の平成16年度に係る業務の
実績に関する評価」について
2005年10月15日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

国立大学法人評価委員会(野依良治委員長)は、2005年9月16日付文書『国立大学法
人・大学共同利用機関法人の平成16年度に係る業務の実績に関する評価について
(委員長所見)』ならびに同『国立大学法人・大学共同利用機関法人の平成16年度
に係る業務の実績に関する評価結果の概要』を発表した
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/09/05092701.htm)。国立大学法人評価
委員会による評価は各国立大学法人ならびに国立大学法人全体に重大な影響を与える
ことになると思われるので、ここにメモの形式で分析を試みる。本メモは、多くの
方々による分析作業に役立つように、原資料からの抜粋、またその整理に相当のス
ペースを割いている。

1.評価行為の根拠

《原資料抜粋》
◎国立大学法人法
第九条 文部科学省に、国立大学法人等に関する事務を処理させるため、国立大学法
人評価委員会(以下「評価委員会」という。)を置く。
2 評価委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 国立大学法人等の業務の実績に関する評価に関すること。
二 その他この法律によりその権限に属させられた事項を処理すること。
3 前項に定めるもののほか、評価委員会の組織、所掌事務及び委員その他の職員そ
の他評価委員会に関し必要な事項については、政令で定める。

◎独立行政法人通則法(読替後)
第三十二条 独立行政法人は、文部科学省令で定めるところにより、各事業年度にお
ける業務の実績について、国立大学法人評価委員会の評価を受けなければならない。
2 前項の評価は、当該事業年度における中期計画の実施状況の調査をし、及び分析
をし、並びにこれらの調査及び分析の結果を考慮して当該事業年度における業務の実
績の全体について総合的な評定をして、行わなければならない。
3 国立大学法人評価委員会は、第一項の評価を行ったときは、遅滞なく、当該独立
行政法人及び政令で定める審議会(以下「審議会」という。
)に対して、その評価の結果を通知しなければならない。この場合において、国立大
学法人評価委員会は、必要があると認めるときは、当該独立行政法人に対し、業務運
営の改善その他の勧告をすることができる。
4 国立大学法人評価委員会は、前項の規定による通知を行ったときは、遅滞なく、
その通知に係る事項(同項後段の規定による勧告をした場合にあっては、その通知に
係る事項及びその勧告の内容)を公表しなければならない。
5 審議会は、第三項の規定により通知された評価の結果について、必要があると認
めるときは、国立大学法人評価委員会に対し、意見を述べることができる。
《原資料抜粋、以上》

2.評価の要領

《原資料抜粋》
◎「国立大学法人及び大学共同利用機関法人の各年度終了時の評価に係る実施要領」
(平成16年10月25日 国立大学法人評価委員会決定。以下、「要領」。)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/sonota/001/05020101.htm

2.1. 「1 各年度終了時の評価についての検討の前提」
「国立大学法人制度は、大学の教育研究に対する国民の要請に応えるとともに、我が
国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図ることを目的とするもの
である。この目的を果たすため、国立大学法人及び大学共同利用機関法人(以下、
「国立大学法人等」という。)は、中期目標・中期計画に沿って自主的に法人運営を
行い、国立大学法人評価委員会が教育研究の特性に配慮して事後にその状況を評価す
ることとしている。
 これらを踏まえ、この評価は、教育研究の特性や大学運営の自主性・自律性に配慮
しつつ、国立大学法人等の継続的な質的向上に資するものでなければならない。」
「各年度終了時においては、中期目標を実現するために、各国立大学法人等が自主的
に行う業務運営の改善・充実に資するよう、各年度における中期計画の実施状況につ
いて評価を行う。」
「各年度終了時においては、…、教育研究の状況については、その特性に配慮し、…
専門的な観点からの評価は行わない。」
「評価は、各国立大学法人等の自己点検・評価に基づいて行うことを基本とする。」

2.2. 「2 各年度終了時の評価の基本方針」
「今後の国立大学法人等においては、法人化を契機として機動的・戦略的な大学運営
の実現を図っていくことが重要であり、法人の経営が各法人の裁量に委ねられている
ことを踏まえ、学内の資源配分を戦略的に見直し、機動的に決定、実行し得るよう、
学内体制の整備を図ることや、学内コンセンサスの確保に留意しつつも、全学的な視
点に立ったトップダウンによる意思決定の仕組みを確立するなど、それに向けた各国
立大学法人等の取り組みを積極的に支援する観点から、評価においては財務、組織・
人事管理等の業務運営に関する取り組み状況を分かりやすく示すものとする。」

2.3. 「3 各年度終了時の評価方法」
「各年度における中期計画の各事項の進行状況を確認するとともに(項目別評価)、
その結果等を踏まえつつ、各国立大学法人等の特性に配慮して中期計画の進行状況全
体について総合的な評価(全体評価)を行う。」
(1) 項目別評価
「1 業務運営・財務内容等の状況
 (「業務運営の改善及び効率化」、「財務内容の改善」、「自己点検・評価及び情
報提供」、「その他業務運営に関する重要事項(施設設備の整備・活用安全管理、
等)」の4項目)」
「ア. 国立大学法人等による自己評価 」
「イ. 国立大学法人評価委員会による検証
  年度計画の記載事項ごとに、自己評価や計画設定の妥当性も含めて総合的に検証
する。国立大学法人等による自己評価と国立大学法人評価委員会の判断が異なる場合
は、その理由等を示す。」
「ウ. 国立大学法人評価委員会による評定
  イの検証を踏まえるとともに、特記事項等も勘案し、4つの大項目ごとに計画の
進行状況を示す。また、特筆すべき点や遅れている点についてコメントを付す。
 進行状況は、以下の5種類により示す。」
「2 教育研究の状況(「教育研究等の質の向上」の項目)
「ア. 国立大学法人等による自己点検 」
「イ. 国立大学法人評価委員会による事業の進行状況の確認
  各国立大学法人等の特性等を踏まえ、事業の進行状況を確認し、特筆すべき点や
遅れている点についてコメントを付す。」
(2) 全体評価
「項目別評価の結果等を踏まえつつ、各国立大学法人等の特性に配慮して法人の中期
計画の進行状況全体について、記述式により評価する。
 その際、学長のリーダーシップの下、機動的・戦略的な大学運営を目指した取り組
みや、国民や社会に対する説明責任を重視した社会に開かれた大学運営を目指した取
り組み等について積極的に評価する。」
《原資料抜粋、以上》

《分析》
「要領」が評価に求める役割は、各法人における学長のトップダウン・リーダーシッ
プ体制や、資源の戦略的配分をはじめとする機動的・戦略的大学運営の確立の、「支
援」という名の政策誘導にある。しかし、学長への権力集中や大学の機動性、戦略性
の重要性の根拠については述べられていない。国立大学法人法は第三条で、教育研究
の特性への配慮の義務を国に課した。上記のような政策誘導がこの配慮義務に反しな
いことを「要領」で述べずに評価が実施されている点を黙過してはならない。
評価の要領が「要領」によって規定された以上、評価結果の方向性は自明である。

3.「要領」と国立大学法人法との不調和

《原資料抜粋》
◎国立大学法人法
第三十条 文部科学大臣は、六年間において国立大学法人等が達成すべき業務運営に
関する目標を中期目標として定め、これを当該国立大学法人等に示すとともに、公表
しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
2 中期目標においては、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 教育研究の質の向上に関する事項
二 業務運営の改善及び効率化に関する事項
三 財務内容の改善に関する事項
四 教育及び研究並びに組織及び運営の状況について自ら行う点検及び評価並びに当
該状況に係る情報の提供に関する事項
五 その他業務運営に関する重要事項
3 文部科学大臣は、中期目標を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらか
じめ、国立大学法人等の意見を聴き、当該意見に配慮するとともに、評価委員会の意
見を聴かなければならない。
◎「要領」
2  各年度終了時の評価の基本方針
(中略)
(3) 各年度終了時の評価の際、国立大学法人等の取り組みを社会に積極的にア
ピールすることや、法人全体の改善・充実を図る観点から、以下の事項を考慮するも
のとする。
(中略)
3 各国立大学法人等の更なる発展のため、必要に応じ、各法人の自主的な中期目
標・中期計画の見直しの検討に資するようなものとする。
《原資料抜粋、以上》

《分析》
国立大学法人法の法文上は、
・中期目標の制定は文部科学大臣が行う。
・国立大学法人は、文部科学大臣による中期目標の制定に際して意見を述べることし
か認められない。
の二点を記述しており、各法人による自主的な中期目標の見直しの検討とはどのよう
な行為を指すものか、判然としない。

4.評価結果

4.1評価委員会委員長所見:「国立大学法人・大学共同利用機関法人の平成16年度
に係る業務の実績に関する評価について」(平成17年9月16日、国立大学法人評価委
員会 委員長 野依 良治。)
《原資料抜粋》
「各国立大学法人等においては、学長・機構長のリーダーシップを発揮する運営体制
の整備や、法人としての経営戦略の策定、戦略的な資源配分の実施等の面で、特色あ
る取り組みを進めているなど、全般的には、法人化を契機として、あるいは法人化の
メリットを活かして改革に積極的に取り組んでおり、法人化初年度の限られた時間の
中で、法人としての経営基盤を確立し、中期計画を順調に実施していることを高く評
価します。今後、各国立大学法人等が、事務の合理化や適切な人件費管理等の面でも
引き続き努力していくとともに、各事業についてのコスト分析や事業の企画・実施に
際しての財政的検討の充実及びこれらを踏まえた外部資金の獲得やコストの節減につ
いても取り組みを進めていくことを期待します。」
「国立大学法人評価については、各国立大学法人等の継続的な質的向上に資すること
を目的とするほか、評価に関する一連の過程を通じて把握した国立大学法人等の状況
を分かりやすく示し、社会への説明責任を果たすことも求められております。」
「今後、各国立大学法人等においては、国立大学法人制度により設けられた経営協議
会や理事・監事等の外部有識者の意見を活用する制度の充実も推進しながら、今回の
評価結果等を踏まえ、法人運営等の一層の改善・充実を図り、我が国全体の高等教育
及び学術研究の発展に向けて、教育・研究活動の更なる活性化が図られることを強く
期待します。」
「なお、国立大学法人評価については、評価結果が各法人の業務運営に活用されるこ
とが重要であるとともに、評価の在り方自体も改善を加えていくことが必要であり、
当委員会としても、今回の年度評価の在り方等について検証しつつ、例えば、財務諸
表の更なる活用や国立大学法人の附置研究所等の全国共同利用に関する評価の充実
等、次年度以降の評価の充実に向けて検討を行っていくことが重要であると考えてお
ります。」
《原資料抜粋、以上》

《分析》
「要領」に則った評価にかなった評価結果が得られたことを高く評価している。一
方、「外部有識者」の意見活用制度の充実を促す。「学内コンセンサスの確保」は一
言も論じられない。評価のあり方の改善への言及で、具体例として財務諸表の活用と
全国共同利用に関する評価の充実をあげるが、今回の評価がこれらを欠く一方、「外
部有識者」の意見活用制度の充実については評価委員会がすでに各法人に対して、評
価による「支援」を具体的評価指標にして宣言している点を黙過してはならない。

4.2「国立大学法人・大学共同利用機関法人の平成16年度に係る業務の実績に関す
る評価結果の概要」(以下、「概要」。)の「II 評価結果の概要」の「1 全体の
状況 」
《原資料抜粋》
○  全般的に、法人化を契機として、あるいは法人化のメリットを活かして改革に
積極的に取り組んでおり、中期計画は順調に実施されているものと評価できる。しか
し、法人としての運営・経営の確立という面で見れば平成16年度は準備・検討段階に
留まっている法人もあり、次年度以降の進展が期待される。
○  業務運営・財務内容等については、「業務運営の改善・効率化」、「財務内容
の改善」、「自己点検・評価及び情報提供」、「その他業務運営(施設設備の整備・
活用、安全管理等)」の4項目について、年度計画の進行状況等について評価を行っ
た。
 その結果、特に「財務内容の改善」については、各法人ともに外部資金獲得や経費
節減等に積極的に取り組んでおり、順調に計画が実施されているものと判断される。
 また、「業務運営の改善・効率化」については、ほぼ計画は順調に実施されている
ものの、人事管理、事務の合理化・簡素化等の点で更に改善の余地があり、一部の法
人については計画の進行状況がやや遅れていると判断される。一方、特筆すべき進行
状況にある法人もあった。
 「自己点検・評価及び情報提供」及び「その他業務運営(施設設備の整備・活用、
安全管理等)」については、ほとんどの法人がほぼ順調に計画が実施されているもの
と判断される。
○  一方、特に業務運営に関し、大学院修士課程又は博士課程において、学生収容
定員の充足率が85パーセントを満たしていない国立大学が11大学あり、今後、速やか
な定員の充足や入学定員の適正化に努めることが求められ、この点について法人に注
意を促す必要がある。 」
《原資料抜粋、以上》

《資料整理》
上記資料を整理すれば、以下のようになる。
・法人としての運営・経営の確立は準備・検討段階に留まっている法人がある。
・「業務運営の改善・効率化」については、人事管理、事務の合理化・簡素化等の点
で更に改善の余地があり、一部の法人については計画の進行状況がやや遅れていると
判断される。
・「財務内容の改善」については、外部資金獲得や経費節減等に積極的に取り組まれ
た。
・「自己点検・評価及び情報提供」及び「その他業務運営(施設設備の整備・活用、
安全管理等)」については、ほとんどの法人がほぼ順調に計画が実施されている。
・大学院修士課程又は博士課程において、学生収容定員の充足率が85パーセントを満
たしていない国立大学は速やかな定員の充足や入学定員の適正化に努めることが求め
られる。

4.3「概要」の「2 項目別評価の概況」の「(1) 業務運営の改善・効率化」
《原資料抜粋》
 ○  ほとんどの法人で、学長・機構長がリーダーシップを発揮するための体制の整
備や、学長・機構長裁量の経費や人員枠の確保等が図られている。体制や仕組みの整
備は行われたが、これらをいかに効果的に機能させるかが今後の課題である。
 また、人事事務・会計事務等の合理化・簡素化については、更に改善の余地があ
り、まずは法人内の体系的な規程の整備を含め、一層の推進を図る必要がある。さら
に、経営協議会や監査の実質化についても一層の努力が求められる。
○  各法人において、新たな社会的ニーズや教育研究の進展に対応するため、既存
の組織の改組・転換を図りながら、積極的に新しい組織の検討・整備が進められてい
る。例えば、学部学科制から学群学類制による柔軟な組織への移行や、学長・機構長
直属の分野横断的な研究組織の設置等の例がある。
 また、一定の教育研究組織の設置に時限を付して、評価により見直すことを制度化
している法人もある。一方、法人化前に時限を付して設置していた施設について一律
に時限を解除している例もあり、法人の自主的な努力が求められる。
○  非公務員化のメリットを活用し、例えば、年俸制の導入、裁量労働制の導入、
兼職・兼業の許可基準の弾力化等、多くの法人で柔軟な人事システムが導入されてい
る。なお、柔軟な新たな人事システムの導入に際しては、あわせて人事事務の軽減に
も努力することが求められる。
○  新たな人事考課制度、個人評価システムの導入が中期計画に掲げられ、検討が
行われているが、実施については今後の課題とされている法人が多い。しかし、平成
16年度から、教員及び事務職員の新たな個人評価制度を実施し、処遇に反映させてい
る例もあった。

【評定の結果】
「特筆すべき進行状況にある」  7法人(8パーセント)
「計画通り進んでいる」  37法人(40パーセント)
「おおむね計画通り進んでいる」  39法人(42パーセント)
「やや遅れている」  10法人(11パーセント)
「重大な改善事項がある」  0法人(0パーセント) 」
《原資料抜粋、以上》

《資料整理》
要点を箇条書きにすれば、以下のようになる。
・学長・機構長のリーダーシップ体制の整備や、学長・機構長裁量の経費や人員枠の
確保等が図られ、今後の効果的機能が課題。
・人事事務・会計事務等の合理化・簡素化に改善の余地あり。
・経営協議会や監査の実質化が必要。
・既存の組織の改組・転換を図りながら、積極的に新しい組織の検討・整備が進めら
れ、学群学類制への移行や学長・機構長直属の分野横断的な研究組織の設置等がみら
れた。
・年俸制の導入、裁量労働制の導入、兼職・兼業の許可基準の弾力化等が導入され
た。

4.4「概要」の「2 項目別評価の概況」の「(2) 財務内容の改善」
《原資料抜粋》
 この項目については、外部資金の導入その他自己収入の増加、経費の抑制、資産の
運用管理の改善等、財務内容の改善に関する各法人の年度計画の実施状況等につい
て、総合的に評価を実施した。
○  財務内容の改善については、特に経費の節減には各法人とも積極的に取り組ん
でおり、評価できる。また、競争的研究資金、共同研究等の外部資金の獲得について
も、法人内でインセンティブを高める方策を講じること等により、一定の成果を上げ
ている。この他、各法人ともに附属病院の増収、経費節減には積極的に取り組み、成
果を上げている。
○  健全な財務運営のための定員、人件費管理については、多くの法人で取り組み
が行われているが、中期的な見通しを踏まえた計画の策定については必ずしも十分で
はない。また、中期的な具体の財政計画の策定については、多くの法人で不十分な状
況がみられ、この方面での改善が必要である。資金管理と経理等については、多くの
法人で法人化以前の方式をそのまま踏襲しているが、法人の規模、分野、学部構成に
応じたシステムの導入が求められる。なお、財務内容を適切に把握するにあたって、
学部、学科、研究所毎に発生するコストを把握し、分析を行うなど、管理会計的な観
点から財務内容の分析を行うための基盤の整備が期待される。
○  その他、法人会計システムの改善について
・  退職一時金に関し、運営費交付金以外の財源により雇用している職員について
は、適正な水準の引当金を計上する必要がある。
・  予算執行に関し、年度途中にその進捗状況を把握して、その分析の下に適切な
管理を行い、必要な措置を講じるなど、より効果的に実施されるよう、改善が期待さ
れる。

【評定の結果】
「特筆すべき進行状況にある」  3法人(3パーセント)
「計画通り進んでいる」  50法人(54パーセント)
「おおむね計画通り進んでいる」  40法人(43パーセント)
「やや遅れている」  0法人(0パーセント)
「重大な改善事項がある」  0法人(0パーセント) 」
《原資料抜粋、以上》

《資料整理》
要点を箇条書きにすれば、以下のようになる。
・経費の節減や、競争的研究資金、共同研究等の外部資金の獲得についても、法人内
でインセンティブを高める方策が進んだ。
・健全な財務運営のための定員、人件費管理については、法人の規模、分野、学部構
成に応じたシステムの導入が求められる。学部、学科、研究所単位のコスト把握と会
計管理が必要。

4.5「概要」の「2 項目別評価の概況」の「(3)自己点検・評価及び情報提供」
《原資料抜粋》
 この項目については、評価の充実、情報公開の推進等に関する各法人の年度計画の
実施状況等について、総合的に評価を実施した。
○  自己点検・評価については、法人全体としての充実した評価の実施に向けて、
体制の整備あるいは方針の検討が進められている。今後、速やかに「企画─実行─評
価」の改革サイクルを確立することが求められる。一方、年度計画の進捗状況を定期
的にチェックするシステムを構築したり、独自のデーターベースを整備している法人
や外部評価に積極的に取り組んでいる法人もあった。
○  広報については、マスコミや地元企業・地域との連携強化、県内すべての高校
訪問、学生の意見を取り入れた広報活動等、法人化を契機として積極的な取り組みが
見られる。

【評定の結果】
「特筆すべき進行状況にある」  4法人(4パーセント)
「計画通り進んでいる」  51法人(55パーセント)
「おおむね計画通り進んでいる」  35法人(38パーセント)
「やや遅れている」  3法人(3パーセント)
「重大な改善事項がある」  0法人(0パーセント) 」
《原資料抜粋、以上》

《資料整理》
要点を箇条書きにすれば、以下のようになる。
・「企画─実行─評価」の改革サイクルの速やかな確立が必要。

4.6「概要」の「2 項目別評価の概況」の「(4) その他業務運営」
《原資料抜粋》
 この項目については、施設設備の整備・活用、安全管理等、その他の業務運営に関
する各法人の年度計画の実施状況等について、総合的に評価を実施した。
○  施設設備に関しては、ほとんどの法人で法人としての施設マネジメントの推進
体制、関連規程が整備されている。また、多くの法人で施設の有効活用を促進する方
策が取られている(共用スペースの確保、施設の一元的管理、スペースチャージの徴
収等)。
○  安全管理面では、パソコン等で薬品を管理する一元管理体制や、民間コンサル
タント等の外部評価を積極的に実施している法人もあった。一方、安全管理マニュア
ル等について検討中の法人もあり、早期の実施が求められる。

【評定の結果】
「特筆すべき進行状況にある」  1法人(1パーセント)
「計画通り進んでいる」  52法人(56パーセント)
「おおむね計画通り進んでいる」  37法人(40パーセント)
「やや遅れている」  3法人(3パーセント)
「重大な改善事項がある」  0法人(0パーセント) 」
《原資料抜粋、以上》

《資料整理》
要点を箇条書きにすれば、以下のようになる。
・施設設備に関しては、ほとんどの法人で法人としての施設マネジメントの推進体
制、関連規程が整備されている。また、多くの法人で施設の有効活用を促進する方策
が取られている(共用スペースの確保、施設の一元的管理、スペースチャージの徴収
等)。

5.分析
評定の結果について、以下のように分類してその特徴を考察する。

5.1「業務運営の改善・効率化」について
5.1.1「特筆すべき進行状況にある」7法人=東大、東工大、福井大、岐阜大、名大、
九大、鹿児島大
《原資料整理》
東大:年度計画の記載38事項すべてが「年度計画を順調に実施している」又は「年度
計画を上回って実施している」と認められ、更に業務改善や事務組織体制の見直し、
競争的な環境の醸成、柔軟な人事・会計システム等、多様な改革を同時進行で進めて
いる
東工大:年度計画の記載62事項すべてが「年度計画を順調に実施している」又は「年
度計画を上回って実施している」と認められ、教員と事務職員の融合による運営体制
の確立、戦略的な資源配分の仕組みの確立、事務等の合理化・簡素化等、学長を中心
として様々な改革に積極的に取り組んでいる
福井大:年度計画の記載69事項すべてが「年度計画を順調に実施している」又は「年
度計画を上回って実施している」と認められ、教育研究組織について、設置後一定期
間内に改廃を含めた必要な見直しを行う方針が決定されている
岐阜大:年度計画の記載39事項中36事項が「年度計画を順調に実施している」又は
「年度計画を上回って実施している」と認められ、更にポイント制や関門制の導入な
ど人事制度面で先進的な取り組みが行われている
名大:年度計画の記載31事項すべて(重要性等を勘案したウエイト反映済み)が「年
度計画を順調に実施している」又は「年度計画を上回って実施している」と認めら
れ、法人運営体制の整備や戦略的な資源配分の面で積極的な取り組みが多く見られる
九大:年度計画の記載43事項すべて(重要性等を勘案したウエイト反映済み)が「年
度計画を順調に実施している」又は「年度計画を上回って実施している」と認めら
れ、さらに運営体制の整備や人事制度面での取り組みが進んでいる
鹿児島大:年度計画の記載25事項すべてが「年度計画を順調に実施している」又は
「年度計画を上回って実施している」と認められ、さらに学長のリーダーシップを発
揮する組織作りや経営協議会、監事の監査体制等、取り組みが進んでいる
《原資料整理、以上》

《分析》
学長権限の強化を基盤として、資源配分の改変などの施策が高評価を与える論拠と
なっている。一方、高評価を与えた論拠が抽象的な大学もある。
年度計画記載の全事項が「年度計画を順調に実施している」又は「年度計画を上回っ
て実施している」と認められなくても高評価を得た大学は岐阜大学のみである。岐阜
大学には以下の特徴がある。
・損益計算上の損失を計上した唯一の大学である。
・文科省出向者が理事・事務局長を務め、また理事の一人(非常勤)は公務員退職
後、独立行政法人理事の就任・退職を経ている。役員出向公務員、退職公務員、独立
行政法人等退職者のすべてを役員に受け入れている三大学のうちの一つである(他は
東京医科歯科大、広島大)。
・「国立大学法人評価委員会タスクフォース」が訪問した四大学の一つである(他は
一橋大、東京工業大、名古屋大)。

5.1.2「やや遅れている」10法人=旭川医大、茨城大、群馬大、上越教育大、信州
大、大阪外大、広島大、大分大、宮崎大、政策研究大学院大
《原資料整理》
旭川医大:年度計画の記載12事項中11事項が「年度計画を順調に実施している」と認
められるが、大学院博士課程において学生収容定員の充足率が85%を満たされなかっ

茨城大:年度計画の記載21事項中19事項が「年度計画を順調に実施している」又は
「年度計画を上回って実施している」と認められるが、事務等の効率化・合理化に一
層の取り組みが求められる
群馬大:大学の設定した年度計画の記載事項については、「年度計画を順調に実施
している」と認められる。しかし、中期計画53事項のうち35事項(約7割)に年度計
画の設定がなく、平成17年度以降の実施となっており、その中には、大学として早急
に取り組むべき事項や着実に検討を進めることが必要な事項があること、さらには特
記事項欄からも業務運営の改善・効率化に関する積極的な取り組みがみられない」
上越教育大:年度計画の記載27事項中25事項(重要性等を勘案したウエイト反映済
み)が「年度計画を順調に実施している」又は「年度計画を上回って実施している」
と認められるが、大学院修士課程において学生収容定員の充足率が85%を満たされな
かった
信州大:、年度計画の記載90事項中83事項が「年度計画を順調に実施している」又は
「年度計画を上回って実施している」と認められるが、法科大学院の申請における問

大阪外大:年度計画の記載46事項中39事項が「年度計画を順調に実施している」又は
「年度計画を上回って実施している」と認められるが、7事項について「年度計画を
十分に実施できていない」
広島大:年度計画の記載58事項中46事項が「年度計画を順調に実施している」又は
「年度計画を上回って実施している」と認められるが、12事項が「年度計画を十分に
実施できていない」又は「年度計画を実施していない」
大分大:年度計画の記載76事項中70事項が「年度計画を順調に実施している」と認め
られるが、6事項が「年度計画を十分に実施できていない」と認められ、さらに組織
体制の整備や経営協議会の活用が十分でない
宮崎大:年度計画の記載33事項中31事項が「年度計画を順調に実施している」と認め
られるが、大学院博士課程において、学生収容定員の充足率が85%を満たされなかっ
たことや人事評価システムの整備・活用に向けた取り組みが遅れている
政策研究大学院大:大学が自ら設定した年度計画の記載11事項すべて(重要性等を勘
案したウエイト反映済み)については「年度計画を順調に実施している」又は「年度
計画を上回って実施している」と認められるが、大学院大学である当該大学で、大学
院修士・博士課程において、学生収容定員の充足率がそれぞれ79.6%、50.6%と大き
く下回っている
《原資料整理、以上》

《分析》
大学院学生定員が充足されていなければ、年度計画中の他の事項の評価に関わらず
「やや遅れている」と評価された。ただし未充足の度合いに基づいた評価とはなって
いない可能性がある。
また「やや遅れている」と評価するにはその論拠が明瞭でない大学がある。

5.2「財務内容の改善」について
「特筆すべき進行状況にある」3法人=東京農工大、新潟大、熊本大
《原資料整理》
東京農工大:年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を順調に実施している」又は
「年度計画を上回って実施している」と認められ、経費抑制、財政基盤の強化、外部
資金の確保に積極的に取り組んで着実に成果を上げている
新潟大:年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を順調に実施している」又は「年
度計画を上回って実施している」と認められ、学内各組織等の収入目標額を設定し、
取り組んでいる
熊本大:年度計画の記載8事項すべてが「年度計画を順調に実施している」と認めら
れ、さらに外部資金獲得や経費抑制に向けた取り組みが進んでいる
《分析》
外部資金調達と経費抑制が進行した大学が高評価を得ている。
文科省による「財務指標等の基礎資料」に記された財務分析指標が活用された形跡は
見られない。

5.3「自己点検・評価及び情報提供」について
5.3.1「特筆すべき進行状況にある」4法人 =東工大、岐阜大、岡山大、九大
《原資料整理》
東工大:年度計画の記載17事項すべてが「年度計画を順調に実施している」又は「年
度計画を上回って実施している」と認められ、個人評価に積極的な取り組みが見られ

岐阜大:年度計画の記載11事項すべてが「年度計画を順調に実施している」又は「年
度計画を上回って実施している」と認められるほか、更に上記の様に積極的な取り組
みが行われている
岡山大:年度計画の記載8事項すべてが「年度計画を順調に実施している」又は「年
度計画を上回って実施している」と認められ、教員の個人評価を実施している
九大:年度計画の記載17事項すべて(重要性等を勘案したウエイト反映済み)が「年
度計画を順調に実施している」又は「年度計画を上回って実施している」と認めら
れ、さらに評価結果を教育研究組織の見直しに反映させるシステムが確立している
《原資料整理、以上》

《分析》
教職員の個人評価を進行させた大学が高評価を得ている。

5.3.2「やや遅れている」3法人 =旭川医大、岩手大、福岡教育大
《原資料整理》
旭川医大:年度計画の記載4事項中3事項が「年度計画を順調に実施している」と認
められるが、1事項について「年度計画を十分に実施できていない」
岩手大:年度計画の記載2事項すべてが「年度計画を順調に実施している」又は「年
度計画を上回って実施している」と認められるが、自己点検・評価に関する全学的取
り組みが不足している
福岡教育大:年度計画の記載2事項すべてが「年度計画を順調に実施している」と認
められるが、評価に関してはシステムの素案作成にとどまっていること、情報公開に
関しては更なる取り組みが求められること、また成果はこれからであること
《原資料整理、以上》

《分析》
・教職員の個人評価が進行していない大学が「やや遅れている」との評価を受けてい
る。
・各法人の年度計画の達成度とは異なる評価委員会独自の評価基準によって評価を下
げている。
・本項目は「自己点検・評価及び情報提供」と称されているが、法人・大学自身の
「自己点検・評価」ではなく、法人・大学を構成する教職員の個人評価を「支援」す
る役割を評価委員会による評価が果たしている。

5.4「その他業務運営」について
5.4.1「特筆すべき進行状況にある」1法人 =九工大
《原資料整理》
九工大:年度計画の記載23事項中22事項が「年度計画を順調に実施している」又は
「年度計画を上回って実施している」と認められるが、長期的な施設の維持管理の視
点とスペースの流動化を図るため、事務部門を含めスペースのレンタル制及びチャー
ジ制を導入した
《原資料整理、以上》

《分析》
年度計画の達成度ではなく、教職員への課金による新たな財源を確保した点が評価さ
れている。

5.4.2「やや遅れている」2法人 =室蘭工大、岐阜大
《原資料整理》
室蘭工大:年度計画の記載5事項中4事項が「年度計画を順調に実施している」又は
「年度計画を上回って実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を
十分に実施できていない」
岐阜大:、年度計画の記載24事項中20事項が「年度計画を順調に実施している」又は
「年度計画を上回って実施している」と認められるが、4事項について「年度計画を
十分に実施できていない」
《分析》
年度計画の達成度に応じた評価となっている。

5.5二つの項目の評定において「特筆すべき進行状況にある」とされた大学 
3大学=東工大、岐阜大、九大
5.5.1学長関係
《原資料整理》
東工大:「学長としての戦略的執行方針が策定されている。」「従来の学長裁量経費
とは別に大学予算の経常経費の1%(約3億円)が学長裁量経費として確保されてい
る。総額約6億5,000万円を確保し、学長主導の重点施策に重点配分されている。」
「教授ポストについて、教員の不補充による20名の学長裁量ポストが確保されている
(平成16年度から毎年5名、平成19年度末に20名)。また、教務職員の退職又は学外
異動に伴うポストが助手に転換され、学長裁量ポストとされている。」「新営建物・
改修建物及び既設建物それぞれに、計9,210uの学長裁量スペースが確保され、21世
紀COEプログラムの各拠点等に活用されている。」「学長の執行方針の下に予算編成
方針が策定されている。」「学長裁量スペースの確保率について、新営建物・改修建
物では共用スペースを除く実効スペースの20%、既設建物では5%とする規則が策定さ
れ、運用が開始されている。」
岐阜大:「大学運営の目標を全学的に共有するため、教職員・学生とのキャンパス
ミーティングが実施されており、評価できる。また、各部署の調査・統計データを
「岐阜大学資料」として取りまとめて大学運営に活用されているほか、次期中期目標
の検討のために「グランドデザイン検討会」が学長の下に設置されており、積極的に
大学の中期的経営方針の検討が行われていると言える。」「学長裁量経費を、萌芽的
な研究の支援や教育改善のための取り組み支援に活用するなど、全学的な長期的視点
での資源配分に積極的な取り組みが行われている。」「人事の適正化については、従
来の定員制を改め、各部局に割り当てられたポイント内で職種や人数を部局長が決定
できるポイント制を導入することとしており、機動性ある弾力的・効率的な人員管理
を志向している点で、評価できる。教員評価については、毎年度個人評価を行い、こ
れに基づき6年毎に総合評価を行う関門制を導入することとしており、教員活動の活
性化が期待される。また、教員について60歳から65歳までの選択的定年制を導入し、
教員本人がその間の目標を設定し学長が裁定することとしている点も、教員の活発な
活動を促す試みとして評価できる。また、事務職員についても、業績評価・能力評価
の2面からなる評価制度が構築されている。」
九大:「「4−2−4アクションプラン」や「5S運動」という総長執行方針の明確
化は、総長及び大学執行部と教職員との意思の疎通を図る上で評価できる。なお、全
教職員への周知及び浸透が期待される。」「経営協議会に加え、学外有識者による
「総長諮問会議」が設置・開催され、委員からの提言を新たな戦略的教育研究拠点形
成、研究スーパースター支援プログラム等の総長のリーダーシップによる研究支援の
推進の参考とするなど、外部からの意見を大学運営に反映させようとする取り組みは
評価できる。なお、今後とも両者の役割分担に留意しながら、外部有識者の意見を運
営に反映させることが期待される。」「総長、理事及び総長特別補佐を中心とした
「拡大役員会」が原則週1回開催され、課題の共有を図り理事間の連携を密にし、効
率的運営が実施されている。」「総長及び理事が、各部局等に出向き、全部局等にお
いて意見交換が実施されている。大学運営を円滑に行うためには、現場で勤務する教
職員と意思の疎通を図ることは重要であり、取り組みとして評価できる。」「全学管
理人員の制度を整備し、総長裁量ポストも含め、計67名(教授2名、助教授34名、講
師2名、助手29名)を全学的視点から配置されており、総長のリーダーシップの下に
進める戦略的教育研究拠点の構築が実現されている。」
《原資料整理、以上》

《分析》
学長に、裁量経費、裁量スペース、裁量ポスト、裁量組織、裁量プログラムなど多種
多様な権限が付与された点が高評価を得ている。

5.5.2人事制度関係
《原資料整理》
東工大:「教員の流動性を一層高めるため、給与制度の優遇措置として「任期付教員
特別手当」が制定され、実施されている。また、大学教員に専門業務型裁量労働制、
高校教員に1年単位の変形労働時間制が導入されている。」「教員・事務職員の評価
制度とともに、表彰制度が導入されている。また、職員の専門的な能力の向上(海外
事務研修、e−ラーニング研修の導入)が図られている。」「人件費の抑制として超
過勤務の削減に努力している(業務の見直し、ノー残業デー、超過勤務の事前承
認)。平成16年度は具体的な数値として現れていないが、次年度以降数値として現れ
ることが期待される。」「教員の個人評価について、評価方法等を整備した部局等か
ら順次実施されている。また、評価を実施した部局等において、評価結果を勤勉手当
の支給に反映する方策が検討され、実施されている。」「事務職員における全学統一
の評価項目、職種毎のウェイト付け等の評価基準が策定され、全事務職員を対象とし
て評価が実施されている。当初の予定を上回り、平成16年度の実施にまで至ってい
る。また、評価結果が昇格・特別昇給等の参考資料として活用されている。」
岐阜大:「人事の適正化については、従来の定員制を改め、各部局に割り当てられた
ポイント内で職種や人数を部局長が決定できるポイント制を導入することとしてお
り、機動性ある弾力的・効率的な人員管理を志向している点で、評価できる。教員評
価については、毎年度個人評価を行い、これに基づき6年毎に総合評価を行う関門制
を導入することとしており、教員活動の活性化が期待される。また、教員について60
歳から65歳までの選択的定年制を導入し、教員本人がその間の目標を設定し学長が裁
定することとしている点も、教員の活発な活動を促す試みとして評価できる。また、
事務職員についても、業績評価・能力評価の2面からなる評価制度が構築されてい
る。」「経費の抑制については、従来の定数制度にとらわれない形で人件費の全学一
元管理を行い、平成17年度からはポイント制に移行することとしている。選択的定年
制の導入に伴い、64〜65歳の教員本給を100分の90とし、人件費削減に努めている。
また、会議の電子化やオンライン事務処理が推進されているほか、「非常勤職員業務
合理化プログラム作成検討会」により、学生休業期間中の非常勤職員の職務体制につ
いて合理化が進められている。」
九大:「全学管理人員の制度を整備し、総長裁量ポストも含め、計67名(教授2名、
助教授34名、講師2名、助手29名)を全学的視点から配置されており、総長のリー
ダーシップの下に進める戦略的教育研究拠点の構築が実現されている。」「柔軟で多
様な人事制度を導入することは、これからの大学運営には必要であり、取り組みとし
て評価できる。任期制、専門業務型裁量労働制、サバティカル制度、民間人登用、特
任教授制度及び事務職員のシフト勤務制等の導入には、多くの利点が期待される。な
お、常に成果の確認をしつつ、実施することが必要である。」「人件費は全学管理と
し、物件費等は戦略的経費を確保した後に、各部局に対し、大学としての戦略項目に
ついて指標を設け、その達成状況に応じ格差をつけて予算を戦略的に配分されてい
る。」「全学的視点から中長期における計画的人員管理のための「九州大学教員の人
員管理要項」が整備されている。なお、今後、中長期かつ全学的な人員配置と人件費
計画の策定を行い、計画に沿って適正に人員管理を行うことが期待される。」「「職
員評価検討プロジェクトチーム」を編成し、「教員業績評価検討の基本方針」及び
「事務職員業績等評価法」が策定されている。今後、評価システムの導入及び適切な
評価の実施が期待される。」
《原資料整理、以上》

《分析》
評価による考査と多様な雇用契約が構想された点が高評価を得ている。
人件費の全学管理・全学統一評価などの導入の意図も、総長裁量の拡大と関連するも
のの可能性がある。

5.5.3教育研究組織関係
《原資料整理》
東工大:「研究科・専攻の枠を越えた学内措置による研究センターが設置されてい
る。また、講座、学科目及び研究部門の新設、廃止及び整備に関する要項が制定さ
れ、新たな予算措置を必要としないものについては学内で柔軟に対応できる体制が整
備されている。この他、法人化以前に時限を付して設置された附属施設について、法
人化後も引き続き時限を付して見直しを行うこととしている点は適切である。」
岐阜大:「教育研究組織の見直しについては、「岐阜大学における組織評価の実施方
針」を定め、教育研究組織の見直しに資する組織評価システムが開発されるととも
に、これに基づいて平成16 年度に点検評価が行われており、評価できる。」
九大:「学内の教育研究組織について「5年目評価、10年以内組織見直し」の原則に
より、5年目に組織のあり方について中期目標・中期計画の達成状況を重視した評価
を実施し、評価結果に基づき10年以内に組織を見直すこととしていることは、教育研
究組織の適切な見直しを行うといった観点から評価できる。今後、計画に沿った着実
な実施が期待される。なお、学生への教育責任や入学者選抜への影響をどう考えるか
などについて、具体的な指針と内外への公表が求められる。」
《原資料整理、以上》

《分析》
教育研究組織の恒常的見直しが構想された点が高評価を得ている。