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新首都圏ネットワーク

『山陰中央新報』論説  2005年8月1日付

県立大学改革/短大をなくしていいのか


 島根県立大学の統合・法人化について審議してきた県大学改革諮問会議は最
終報告書をまとめた。

 二〇〇七年に県立大学と県立島根女子短大、県立看護短大を統合するととも
に公立大学法人とする。両短大は当面、県立大学に併設される短期大学部にな
るが、将来的には四年制大学に移行することを求めている。

 全国的に短大への志願者が減り、統廃合されたり四年制大学に移行するケー
スが目立っている。職業技術の高度化に伴い、短大から四大レベルに教育水準
のアップを求められている背景がある。その流れに乗り遅れてはならない、と
いうのが報告書の趣旨である。

 しかし両短大が四大化すると、島根県内には短大がなくなる。経済的な理由
などから地元の短大に通いたいというニーズは依然として根強い。そうした人
たちが行き場を失う。

 報告書は、短大を取り巻く厳しい環境や職業技術の高度化ばかりに目を奪わ
れて、足元で短大を必要としている人たちの立場にあまり関心が向いていない。

 四大化が実現するかどうかは予断を許さないが、少なくとも地元に短大を必
要としている人たちがいる。そのことだけは忘れられてはならない。

 報告書は、県立大学の統合・法人化に続いて短期大学部の四大化を速やかに
進めるべきだと提言。その際、学部構成やどれくらい学生を確保できるか、キャ
ンパス整備の財政問題などの課題を列挙している。

 教育関係者や産業界代表らでつくっている諮問会議では両短大の四大化を推
進する声が大勢を占めた。看護師や栄養士など専門的職業のレベルアップが求
められており、県看護協会や県栄養士会など県内の関係団体からも四大化を求
める要望が出ているという。

 大学側からは高校生の四大志向が強まり、このままでは短大の生き残りが懸
念されると危機感を訴える声も出た。志願者が減り続ける短大の四大化は、時
代の流れと言わんばかりの空気に包まれた。

 しかし島根女子短大、看護短大ともまだ根強い需要がある。志願者は減る傾
向にあるとはいえ、今春の入学試験の志願者は両短大を合わせて八百五十五人
に上った。その多くは県内出身者である。

 島根女子短大に至っては六、七年前より志願者はむしろ増えている。公立の
短大に対する地元の評価は高く、自宅から通える短大を選択する高校生も少な
くない。短大としての存在意義は失われていない。

 四大化の可能性について県は「財政問題を中心に課題が多く検討を要する」
として慎重である。多大な財政負担を伴う四大化を県民が本当に求めているの
か。財政危機の中で県民負担に合意が得られるのか。さらに見極めていく必要
があるのではないか。

 少子化で志願者と入学定員が同数となる「大学全入時代」がすぐそこまで来
ている。大学が過剰となる中で淘汰(とうた)される大学も出てくる。

 そうした中での四大化は相当の戦略性が求められている。高校生たちにとっ
て魅力があり、地域からも必要とされる。そのビジョンを描かなければならな
い。